第109回麻布大大会 男女共同参画推進ランチョンセミナー報告
- 平成28年9月13日 SRD男女共同参画推進委員会
- 第109 回麻布大大会では、“「安心して研究・教育職を続けるために」〜出産、療養、留学等の長期休職者のサポートについて〜”というテーマでランチョンセミナーを開催しました。
科学技術系専門職の男女共同参画実態調査の第3回大規模アンケートでは、職場で週に40〜60時間働く人が全体のうちのおよそ45%を占めていることがわかりました。しかし、研究や開発にあてられる時間は、週に10時間未満と答える人の割合がおよそ25%にのぼることもわかりました。このような環境で、育児・介護・留学で休職すること、あるいは休職した人をサポートすることは非常に困難なことかもしれません。本セミナーでは、休職時にどんなサポートが必要なのか、どんなサポートが可能なのか、皆さんと考えるために
- ・明治大学農学部
専任講師 川口真以子 先生
- ・東京農業大学応用生物科学部
教授 河野友宏 先生
- 以上のお二人をお迎えしてお話を伺いました。報告者の感想も加えてセミナーの内容を要約しました。
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迫力満点の
川口先生のお話
川口先生は学位を取得された後、アメリカに留学されご結婚されたそうです。帰国後は、武蔵野大学の助手(助教)にご着任されました。「子供が欲しい」という気持ちは、川口先生曰く「本能」としてお持ちだったとのこと、34歳の時にご懐妊されました。川口先生は妊娠がわかって、すぐに周りの人に報告したそうで、そうして良かったと振り返ります。なぜなら、報告した翌日にも入院することになってしまったからです。当時、職場では実習の準備等のデューティーがありましたが、職場の方々に代わって頂いたそうで、日頃からのコミュニケーションで人間関係を構築しておくことがサポートを受けるためには重要とお話し下さいました。ご勤務されていた武蔵野大学(前職)では、川口先生を期に、産休・育休を取得した女性教員の所属する研究室が、研究員を雇用できる制度ができたそうです。また、川口先生は産後の体調がすぐれず、旦那様は仕事で帰宅が遅く平日の昼に家事を手伝えなかったため、お母様やベビーシッターのサポートを受けながら復職されました。研究面では研究費の分担者に加えてもらえたことに感謝されていました。様々な苦難があっても、時には周囲の暖かいサポートを受けながら、「研究・教育」を充実させたい!という力強いメッセージが伝わってきました。
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本音と立前をまじえた
河野先生のお話
河野先生は、「自分で研究がしたい」「研究時間がどんなに長くても厭わない」というご自身の考えを冒頭でお話くださいました。男女を問わず同意見の研究者も少なくないのではないでしょうか。そのような思想をベースにした場合、休職中の研究者にどのようなサポートができるのか、例えば大学であれば授業や学生指導を分担するということは可能かもしれません。しかし、休職者本人の研究は本人にしかできない、という河野先生のお話は現実的でした。多くの女性研究者が、いつ、何人の子供を出産するか、休職中の研究はどうしたらよいか、切実な問題として悩むのはここに起因するのかもしれません。河野先生が女性研究者だったらとの問いに、暫く間をおいて、やはり子供がいない人生は考えなかったように思うとおっしゃいました。河野先生は、また、PI を目指す研究者ばかりでなく、あるプロジェクトの中で無理なく力を発揮する研究者がいることにも触れられました。研究者自身がどういう人生を歩みたいかは多様で、支援制度は手厚い機関もあればそうでない機関もありますが、今一度、休職中のサポートについて各人が考える良い機会となったように思いました。
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セミナーの様子
セミナーには、お陰様で、100 名を超える会員にご参加頂き盛会のうちに終了することができました。関心をお寄せ頂きましたことに心より御礼申し上げます。今後も、老若男女を問わず学会員が今よりも発展していくための一助になるようなセミナーを企画したいと思います。
- 報告者:男女協同参画推進委員長 尾畑やよい