第111回信州大大会 男女共同参画推進ランチョンセミナー報告
- 平成30年9月14日SRD男女共同参画推進委員会
- 本学会の男女共同参画推進委員会は2007年に発足され、1)男女問わず学会員が活動しやすい環境の提案、2)ロールモデルの紹介、3)キャリア形成において性別によるバイアス(無意識のバイアス)が生じないための啓蒙、4)学協会連絡会での活動を通して内閣府や各省庁への施策提言とその助勢などを行ってきました。このおよそ10年間で学会がどのようにかわってきたのか、今後の課題がどのような点にあるのか、皆さんと情報を共有し考えるために、第111回信州大大会では、「“大規模アンケート2016”から見る学会員のライフワークバランス」というテーマでランチョンセミナーを開催しました。
- <本学会における男女共同参画推進の推移を報告>
- 一般に、学会を構成する学会員には正会員、学生会員、名誉会員などがありますが、本学会に限らず多くの理系学会で存在する格差があります。それは学生会員と正会員の女性比率の格差です。本学会の学生会員の女性比率はおよそ40%前後で、この10年間、その比率に大きな変動はありません。これに対し、2007年当初の正会員の女性比率は11.5%で、学生会員の女性比率の1/3以下と大きな格差が存在しました。その後、2007年から2017年にかけて、正会員の女性比率は11.5%→12.3%→14.0%→15.9%→17.8%→19.1%と少しずつではあるものの着実に上昇し格差が是正されつつあります。また、年に一度開催される大会での座長については、2007年当時、座長の女性比率は5.7%でしたが、こちらも毎年上昇し信州大会では27.6%(発表者の女性比率は35.3%)となりました。この推移と現状をどう捉えるかは人それぞれですが、性別によってキャリア形成にバイアスが生じなければ、あるいは性別によらず均等に機会があるとすれば、概ね「学生会員の女性比率=正会員の女性比率」、「発表者の女性比率=座長の女性比率」になるものと思われます。
一方、本学会の2018年の女性役員・委員の比率は19.5%とほぼ正会員の女性比率に比例しています。一見、バイアスがないように見えるのですが、実は女性役員・委員の56.5%が(本学会内で)別の役員・委員を兼務しています。ただしこれは、男性役員・委員についても同様の傾向が認められ、その31.9%が別の役員・委員を兼務しています。学会での役員・委員会活動は本務に加えて行う仕事で負担がないとは決して言えません。男女問わず、会員の裾野を広げ、幅広い人材の育成・発掘につとめることが本学会の発展につながるものと(個人的には)思いました。
- <2016年(第4回)科学技術系専門職男女共同参画実態調査の解析結果を報告>
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大規模アンケートでは18159人(本学会から136人:会員の16%)の回答が得られました。ご協力頂きました会員の皆様に厚くお礼申し上げます。また学会員のアンケートの集計・解析作業は、男女共同参画推進委員の大鐘潤、越後貫成美、尾畑やよい、永岡謙太郎(敬称略)の4人で行い、全体の調査結果は男女共同参画学協会連絡会が集計した結果を参照しました。以下は一部抜粋しております。
ライフイベント:配偶者の有無、子供の有無などは、女性会員の方が「なし」と回答する率が高く、この傾向は2008年の結果とあまりかわりませんでした。子供が「いる」と回答した男女で、育児休業を「取得しなかった」と回答した方々の理由に着目すると、男性では「休業制度がない」「休業できる職場環境にない」と回答する率が高く、男性の育児参加への難しさが伺えました。一方、本学会員の女性では「休業したくなかった」と回答する率が高く、この回答結果は全体結果のおよそ 2倍に相当し、とても特徴的でした。子供の数に着目すると、男性では30代(0.9人)、40代(1.4人)、50代(1.8人)と年齢の上昇に伴い平均の子供の数が増加していました(少子化の影響も含まれるとは思います)が、女性では30代(0.7人)で子供の数が頭打ちとなり、40代、50代と年齢の上昇に伴い増加するということはありませんでした(生殖生物学的には当然の結果です)。2人以上子供が欲しいと考える人は男女共に90%以上に達しています。ライフとワークを両立させ、希望をかなえるためにはどうしたらよいでしょうか。男女問わずライフイベントを考慮した評価、例えばポスドクやテニュアトラックの期間を延長するなど、あるいはdiversityに寛容なもっと大胆な施策が必要だと思われました。
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ワークイベント:職場で仕事をしている時間は、2003年の結果と比較して男女共に週あたり11時間も減少していることがわかりました。男女共に、ライフワークバランスがかわってきていることが伺えます。しかし、それでもなお男女共に職場と自宅で仕事をする時間は週あたり平均50時間を越え、有期職の男性では平均60時間以上働いているというのが現状です。ワークに変調気味であることは否めません。これに対して、「早い帰宅(18時頃)を心掛け土日は原則出勤しない」という束村委員の方針が紹介されました。束村委員が行った学生アンケートでは「研究員や大学教員になりたいですか?」との問いに、男女共に「なりたくない」と回答した学生が多く、その理由として長時間労働があげられたようです。学生や若い研究者・教員が希望をもてる職場環境を作ること、ワークシェアを拡充することで働く時間を上手に減らすことなどが、今後の課題かもしれません。全体の詳細な解析結果および過去の解析結果は、以下のURLから閲覧することができます(https://djrenrakukai.org/enquete.html#enq)。
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セミナーには、お陰様で、100名を超える会員にご参加頂き盛会のうちに終了することができました。関心をお寄せ頂きましたことに心より御礼申し上げます。今後も、老若男女を問わず学会員が今よりも発展していくための一助になるようなセミナーを企画したいと思います。
- 報告者:男女共同参画推進委員尾畑やよい