高等教育および学術研究振興に関わる予算の確保に関する要望書提出

行政刷新会議「事業仕分け」による高等教育および学術研究にかかわる文部科学省の予算要求に対する縮減勧告に反対し、高等教育および学術研究振興に関わる予算の確保を求める要望書を、内閣総理大臣、文部科学省大臣、同副大臣および政務官宛に提出しました。

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内閣総理大臣  鳩山 由紀夫 殿

文部科学大臣  川端 達夫 殿

文部科学副大臣 中川 正春 殿

文部科学大臣政務官 後藤 斎 殿

高等教育および学術研究振興に関わる予算の確保に関する要望書

日本繁殖生物学会理事長 眞鍋 昇

 平成21年11月 11日から17日に行われた行政刷新会議ワーキンググループによる事業仕分けにおいて、文部科学省の高等教育および学術研究振興に関わる予算要求に対して、縮減の方向性が提案されました。私たちはこうした判断は不適切であり、予算縮減は日本の高等教育および学術研究の発展、ひいては科学技術の発展を大きく損なうことにつながることを憂慮し、高等教育および学術研究振興に関わる予算が十分に確保されるよう要望致します。

1)先端研究を支援する様々な予算(事業番号3-20)について

 先端研究に関わる予算の縮減は、鳩山首相が所信表明で述べた「先端分野における研究開発、人材育成の強化などにより、科学技術の力で世界をリードする」という方針に反しています。行政刷新会議ワーキンググループが提案する「整理・一本化」の方向性は、特定の視点からのみの研究支援への偏重に帰結し、短絡的で、成果の出やすい研究のみを助長するおそれがあると懸念されます。現在のように、先端研究が多様な基盤によって支えられることが、長期間の継続した研究活動を可能にし、真に実社会に貢献しうる科学技術の形成につながることはいうまでもありません。よって、先端研究を支援する様々な予算の縮減に反対し、これまで以上に手厚い先端研究の振興に関わる予算の確保を要望致します。

2)若手研究育成に関する予算(事業番号3-21)について

 博士課程大学院生、ポストドクターなどの任期付き研究者および定職を得た若手研究者による研究活動は学術研究の推進の大きな原動力となっています。鳩山首相が所信表明で述べた「先端分野における研究開発、人材育成の強化などにより、科学技術の力で世界をリードする」という方針のためには、博士課程大学院生やポストドクターなどを日本の学術研究の担い手として位置づけ、その育成・支援策を強化する必要があります。行政刷新会議ワーキンググループの意見は学術研究の現場における若手研究の絶え間ない努力によって、研究現場が支えられ、先端的研究成果が生み出されてきているという現実を無視したものであり、かつポストドクターに対する偏見に満ちたものであり、不適切といわざるをえません。よって、若手研究育成に関する予算の縮減に反対し、博士課程大学院生、ポストドクターなどの任期付き研究者の育成、定職を得た若手研究者の創造性や自立性が十分に発揮できるような支援に関わる予算の一層の強化を要望します。

3)女性研究者支援に関わる予算(事業番号3-39)について

 女性研究者を広く登用することは、鳩山首相の掲げた「職場や子育てなど、あらゆる面での男女共同参画を進める」という方針に合致し、さらに、「先端分野における研究開発、人材育成の強化などにより、科学技術の力で世界をリードする」ために、必要不可欠です。男性に偏重した高等教育および学術研究機関のアクティビティーを高め、高等教育を学ぶ女子学生のロールモデルを提示することは、高等教育と学術研究のさらなる発展に資することはいうまでもありません。よって、女性研究者支援に関わる予算の縮減に反対し、女性研究者を支援するより一層広範な施策実現を要望致します。