vol. 51-6 (2005)

Volume 51, Number 6(2005)

IL-2レセプターβ鎖過剰発現遺伝子改変マウスにおける子宮ＮＫ細胞の微細構造（J. Reprod. Dev. 51: pp. 695-698, 2005）
國分啓司1)・本道栄一1,2)・難波泰治1)・日下部健3)・佐加良英二4)・木曾康郎1,2)

1)山口大学大学院連合獣医学研究科
2)山口大学農学部・家畜解剖学講座
3)大阪医科大学・解剖学第一講座
4)九州歯科大学・実験動物施設

我々は以前、IL-2レセプターβ鎖過剰発現遺伝子改変（Tg2Rβ）マウスでは、妊娠12日までに全ての胎子が再吸収されるかまたは死亡することを報告した。本研究では妊娠における子宮ＮＫ（uNK）細胞の役割を明らかにするため、Tg2RβマウスのuNK細胞の微細形態について透過型電子顕微鏡を用いて観察した。妊娠10日のTg2RβマウスのuNK細胞とその顆粒が同時期の対照群に比べて大きかった。これらのuNK細胞は、妊娠12日の対照群のuNK細胞に似ていた。このことはTg2RβマウスのuNK細胞は分化の進行が対照群と比較してより早いことを示している。また、Tg2Rβマウスの妊娠10日のuNK細胞では内包する顆粒は楕円形で不定形であった。これらの顆粒のキャップ構造には多胞領域が存在しており、このことはTg2RβマウスのuNK細胞が細胞傷害活性を有していることを示唆している。

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ミニブタ体細胞クローン胚の作出に用いる融合および活性化用培地中におけるカルシウム濃度の最適化（J. Reprod. Dev. 51: pp. 699-706, 2005）
三好和睦・遊木靖人・吉田光敏

鹿児島大学農学部家畜繁殖学研究室

電気活性化によるブタ体外成熟卵子の単為発生能に関して、活性時のCa²⁺濃度およびサイトカラシンB処理の影響を調べた。次に、得られた条件下にてミニブタ由来体細胞を用いた核移植胚を作出した。核移植は、活性化に先立って電気融合により行い、融合時のCa²⁺の有無が核移植胚の発生に及ぼす影響を調べた。単為発生において、電気活性時のCa²⁺濃度を0.1 mMとし、活性化後にサイトカラシンB処理をした場合、有意に高い胚盤胞への発生率（28.6%）が得られた。この場合、サイトカラシンB処理による第2極体の放出抑制効果は明らかであった。ミニブタ由来体細胞を電気融合する際、0.1 mM Ca²⁺の有無が融合率に影響することはなかった。また、融合後に活性化処理を行わずとも、低頻度（2.7-9.0%）で胚盤胞への発生が見られた。一方、Ca²⁺不在下で融合し、その後に活性化した場合の胚盤胞への発生率（28.9%）は、0.1 mM Ca²⁺存在下で融合した場合（16.5%）よりも有意に高かった。以上の結果より、核移植を行う際、Ca²⁺不在下で電気融合し、その後に0.1 mM Ca2+存在下で電気活性およびサイトカラシンB処理をした場合に、最も高い胚盤胞への発生率が得られることが示された。

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Busulfan胎生期曝露による第一次卵胞減少はDonryuラットの子宮発癌を促進する（J. Reprod. Dev. 51: pp. 707-714, 2005）
吉田　緑1)・渡辺　元2)・代田真理子3)・前川昭彦1)・田谷一善3)

1)佐々木研究所
2)食品薬品安全センター
3)東京農工大学

ヒトやラットでは萎縮性卵巣の子宮内膜腺癌発生との関与が報告されている。我々は第一次卵胞数を減少させるbusulfanを子宮癌好発系Donryuラットの胎生期に曝露し、卵胞数減少が子宮内膜腺癌に及ぼす影響を検索した。妊娠14日目のラットに2.5および5.0 mg/kgのbusulfanを単回腹腔内投与し得られた雌仔を実験に用いた。雌仔ラットは11週齢にてニトロソ系発癌剤による発癌起始操作を行い、15ヶ月齢まで飼育して子宮の増殖性病変の発生と卵巣の形態を観察し、関連ホルモンの血中レベルを測定した。Busulfan5.0 mg/kg群では、子宮内膜腺癌の発生頻度と腫瘍性病変数ともに有意な増加を示したが、2.5 mg/kg群は対照群と同様であった。Busulfan群では対照群と比べ早くより持続発情を示し、5.0 mg/kg群では対照群より約4ヶ月間早い6ヶ月齢で、2.5 mg/kg群では8ヶ月齢で大部分が持続発情となった。Busulfan投与の卵巣は萎縮し、形態学的に黄体および卵胞ともに殆ど認められなかった。Busulfan投与により血中のインヒビン、エストロゲンおよびプロゲステロンともに減少したが、E/P比は5.0 mg/kg群で増加傾向を示した。これらの結果より、busulfan胎生期曝露による卵胞数の減少がDonryuラットの子宮内膜腺癌発生を増強することが明らかとなった。その機序として、卵胞数の減少による早期からの卵巣機能障害が相対的高エストロゲン状態をもたらし、その結果子宮体部癌の発生に影響している可能性が示唆された。

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デキサメサゾンによって誘起されるブタ卵巣へ投射する交感神経の変化と卵巣内ステロイド合成能の変化（J. Reprod. Dev. 51: pp. 715-725, 2005）
Barbara Jana1)・Anna Dzienis1)・Anna Rogozińska1)・Mariusz Piskuła2)・Maria Jedlinska-Krakowska3)・Joanna Wojtkiewicz4)・Mariusz Majewski4)

1)Division of Reproductive Endocrinology and Pathophysiology, Institute of Animal Reproduction and Food Research of the Polish Academy of Sciences, Poland
2)Department of Nutrition, Institute of Animal Reproduction and Food Research of the Polish Academy of Sciences, Poland
3)Division of Pathophysiology, Department of Pathology and Pharmacology, Faculty of Veterinary Medicine, University of Warmia and Mazury, Poland
4)Division of Clinicial Physiology, Department of Functional Morphology, Faculty of Veterinary Medicine, University of Warmia and Mazury, Poland

本研究は、デキサメサゾン（DXM）によって引き起こされる嚢腫卵胞において、交感神経系の投射やステロイド合成能およびカテコールアミン含量がどのように変化するかを確かめることを目的とした。嚢腫卵胞は対照群に比べより多くの交感神経繊維の投射を受けており、嚢腫卵胞液および嚢腫卵胞壁のノルアドレナリン含量は、対照群の大型卵胞に比べ優位に高い値を示した。DXM投与後、小型および中型卵胞壁におけるノルアドレナリンおよびアドレナリン含量は有意に増加し、嚢腫卵胞液および嚢腫卵胞壁におけるアンドロジェンおよびエストロジェン含量は有意に減少したが、プロジェステロンは嚢腫卵胞壁で高値を示した。DXM投与により、小型卵胞液中のエストロン含量が有意に減少し、さらに中型卵胞壁および卵胞液におけるプロジェステロン含量が減少した。免疫組織化学により各種ステロイド合成酵素に対する効果を確かめたところ、DXM投与は嚢腫卵胞におけるP450sccおよび3β-HSDの発現を増加させ、嚢腫卵胞以外の卵胞におけるP450scc増加および3β-HSDとP450aromの減少を引き起こした。このように、DXM投与は、嚢腫化をともなうブタ卵巣におけるステロイド合成を変化させるとともに、卵巣へ投射する交感神経を増加させ、その増加はカテコールアミン含量との間に高い相関を示した。本研究においてDXM投与によって見られた変化は、卵巣嚢腫の発症機序に少なくともある程度は関連した事象であるかもしれない。

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in vitroでの豚の成熟および発育段階の黄体におけるアポトーシスとGH, IGF-1誘導プロゲステロン分泌に対するレプチンの効果（J. Reprod. Dev. 51: pp. 727-733, 2005）
Ewa Łucja Gregoraszczuk・Anna Ptak

Laboratory of Physiology and Toxicology of Reproduction, Department of Animal Physiology, Institute of Zoology, Jagiellonian University, Poland

本研究はGHとIGF-１によって黄体からの分泌が促進されるプロゲステロンをレプチンが調節しているか否かを決定するために行われた。発育初期および成熟黄体から黄体細胞を分離培養し、GH,IGF-1およびレプチン（0-200 ng/ml）を種々組み合わせて培養液に添加した。分泌されたプロゲステロン濃度は培養48時間後に測定した。発育初期の黄体においては、使用したすべての濃度のレプチンはプロゲステロンの基礎値に影響を示さなかったが、caspase-3活性は抑制した。レプチンとGHの複合添加では、レプチンはGH誘導のプロゲステロン分泌およびcaspase-3活性のいずれにも効果を示さなかった。一方、レプチンとIGF-1との複合添加では、プロゲステロン分泌は減少し、caspase-3活性は増加した。成熟黄体においては、レプチンは使用したすべての濃度において、プロゲステロンの基礎値やGHにより刺激されるプロゲステロン分泌には影響を与えなかった。最高の200 ng/mlのレプチン濃度でのみ、レプチンとIGF-1の複合添加によりプロゲステロンの減少が認められた。また、この時、caspase-3活性には影響しなかった。以上のことから、我々は、レプチンの役割は黄体形成時期に限られると結論した。黄体期の発達段階の時期では、レプチンは抗アポトーシス因子として作用し、一方でIGF-1による抗アポトーシス作用を緩衝する。それによって、過剰なアポトーシスから細胞を保護し、発育段階の黄体がホルモン分泌を維持するのに必要な細胞数を確保する。

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超低温保存後のイエネコ精巣上体精子の運動率、原形質膜正常率およびその保存精子の透明帯付着能（J. Reprod. Dev. 51: pp. 735-739, 2005）
柏崎直巳1)・山口　亮1)#・上杉隆平2)・菱山信也3)・金　政秀4)・中務　胞1)##・小嶋佳彦5)・奥田泰士1)###・久松　伸6)・猪股智夫1)・紫野正雄1)

1)麻布大学大学院獣医学研究科
2)上杉ペットクリニック
3)菱山動物病院
4)大野台動物病院
5)小嶋動物病院
6)麻布大学大学院環境保健学研究科
#現所属：株式会社BCS
##現所属：株式会社トランスジェニック
###現所属：三菱化学生命科学研究所

絶滅危惧種の野生ネコ科動物のモデルとしてイエネコの精巣上体を超低温保存し、凍結・融解後の精子の運動率、原形質膜正常率および同種透明帯への付着能を調べた。20匹のイエネコから採取した精巣上体精子を3%グリセリンを含む卵黄主体の希釈液で0.25 mlストローへ封入して凍結した。凍結・融解後の精子の運動率および原形質膜正常率は、各々31.8±2.4% 、32.2±4.2%であった。また、融解精子を同種透明帯と3時間共培養したところ、20サンプルのうち16サンプルで透明帯付着能が認められた。これらの結果から、本研究で用いた精巣上体精子超低温保存は、イエネコにおいて有効であり、野生ネコ科動物の遺伝資源保存に対して適切な情報を提供するであろう。

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異種移植したブタ卵巣組織における卵胞と卵母細胞の発育と成熟およびその体外成熟培養（J. Reprod. Dev. 51: pp. 741-748, 2005）
香川則子1)・桑山正成1)・宮野　隆2)・眞鍋　昇3)

1)加藤レディーズクリニック研究開発部
2)神戸大学農学部応用動物遺伝学
3)東京大学大学院農学生命科学研究科高等動物教育研究センター

異種移植して培養したブタ卵巣組織の胞状卵胞由来の卵母細胞を体外で培養して成熟させることができた。哺乳類卵胞の発育、成熟および閉鎖を制御している機構を理解し、卵胞選抜の分子機構を解明する研究のモデル動物としての最適条件を探るべく、ブタの卵巣組織片を成雌性複合免疫不全（SCID）マウスの腎漿膜下へ移植し卵胞発育における移植期間の影響を検討した。直径0.005 mm以下の原始、直径0.1 mm以下の1次および直径0.3 mm以下の2次卵胞を含むが3次卵胞（胞状卵胞）を含まないブタ卵巣組織片を異種移植し、2および8週間後に直径0.5から3.0 mmの胞状卵胞から卵子・卵丘複合体を回収し、これを体外培養して卵母細胞の成熟を評価した。移植2週間後の場合、17.6％の卵母細胞がmetaphase IIまで成熟したが、移植8週間後の場合には卵母細胞の成熟は認められなかった。移植2週間後に3次卵胞まで発育した卵胞から回収した卵母細胞を体外培養することで、成熟させることができる培養系が確立した。

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体内培養した体外受精由来胚をもとに作出した栄養膜小胞との共移植によるウシ切断2分離胚の受胎率の推移（J. Reprod. Dev. 51: pp. 749-756, 2005）
橋谷田豊1,2)・岡田真人2)・今井　敬2)

1)独立行政法人家畜改良センター奥羽牧場
2)独立行政法人家畜改良センター本所

体外受精由来胚盤胞を子宮内に移植し、回収した受胎産物から作出した栄養膜小胞（TVs）とウシ切断2分離胚を共移植した。受胎率は初回の妊娠診断において、共移植区（66.7％,16/24）が対照区（34.5％,10/29）に比べ、有意に高かった（P<0.05）。2回目の診断では、共移植区において3頭の早期胚死滅が確認された。子牛の分娩結果をもとにした最終的な受胎率は、各々41.7％（10/24）および27.6％（8/29）であった。移植直前に測定した共移植区のTVsの直径は、受胎牛および不受胎牛の間で有意な差はなかった。産子の生時体重および妊娠期間は、共移植区と対照区で同様の結果であった。共移植区において、移植胚と分娩産子の遺伝的同一性は共移植されたTVsによって影響を受けなかったことを血液型検査による親子判定により確認した。共移植区を含むすべての産子は、外貌上正常であった。これらの結果から、体外受精由来胚盤胞を子宮内に移植し、回収した受胎産物から作出されたTVsと切断2分離胚との共移植は、体内由来胚から作出されたTVsと同様に妊娠の早期において切断2分離胚の受胎性を改善することが示された。

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分娩後子宮内膜炎発症牛の分娩前後における免疫反応（J. Reprod. Dev. 51: pp. 757-764, 2005）
Ill-Hwa Kim・Ki-Jeong Na・Nhan-Pyo Yang

College of Veterinary Medicine, Chungbuk National University, Korea

分娩後子宮内膜炎を発症した牛が、分娩前後においてどのような免疫反応を示しているかを知ることは、乳牛群においてより効率的な繁殖管理法を確立する上で有益と思われる。本研究では、分娩後4週間以内に子宮内膜炎を発症した牛と発症しなかった牛について、分娩前後の免疫反応を比較した。分娩後子宮内膜炎を発症した牛では、対照牛に比べて、分娩前1週間から分娩後4週目までの血液中の総白血球数と好中球、リンパ球および単球数が多かった（P＜0.05）。また、白血球の食作用も低下していた（P＜0.01）。正常対照牛では、血清中TNFα濃度が分娩後の週数が経過するにしたがって低下したが、子宮内膜炎発症牛では、分娩後1週目から増加を示し、3、4週目では、対照群との間に、有意差が認められた（P＜0.01）。分娩後子宮内膜炎牛におけるこのような白血球数の増加や血清TNFaの増加は、分娩後における子宮感染によるものと考えられた。これらの牛は、すでに、分娩前から白血球の食作用の低下を示しており、このことが、分娩後子宮内膜炎を発症させやすくしたものと推察された。

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体細胞および同一個体由来ntES細胞からのクローンマウスの作出（J. Reprod. Dev. 51: pp. 765-772, 2005）
若山清香1,2)・水谷英二1,3)・岸上哲士1)・Ngyuan Van Thuan1)・大田　浩1)・引地貴亮1)・Hong Thuy Bui1)・三宅正史2)・若山照彦1)

1)理化学研究所発生・再生科学総合研究センター　
2)神戸大学大学院自然科学研究科生命資源科学専攻
3)東北大学大学院農学研究科動物生殖科学分野

体細胞からのクローンマウスの成功率は低いが、ES細胞からは比較的容易に作出できる。そこで我々は体細胞核移植胚より得られた胚性幹細胞（ntES細胞）を用いてクローンマウスを作成することにより、作成効率が体細胞を用いた場合より向上するか検討した。その結果、7個体のマウスの体細胞核から11匹のクローンマウスと68のntES 細胞株、およびそれらのntES細胞核から41匹のクローンマウスを作出した。クローンマウスの成功率は、予想に反してntES細胞を用いた場合でも改善はみられなかったが、体細胞核移植ではクローンマウスの作出に失敗した2個体からでも、ntES細胞の核移植によってクローンマウスの作出に成功した。最終的に7個体中6個体から体細胞あるいはntES細胞をドナー核として用いることでクローンマウスの作出に成功した。このように、ntES細胞をドナーとしてもクローンマウスの成功率は改善されないが、重要なマウスの個体をクローン技術で維持するためには、ntES細胞株も同時に樹立しておいた方が有効である。それらのntES細胞は核移植のドナーとして無限に増やすことができ、現在の核移植技術を補完するであろう。

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着床遅延マウスおよび分娩遅延マウスにおける子宮NK細胞の分化と消失（J. Reprod. Dev. 51: pp. 773-776, 2005）
國分啓司1)・本道栄一1,2)・坂口紀子2)・佐加良英二3)・木曾康郎1,2)

1)山口大学大学院・連合獣医学研究科
2)山口大学農学部・家畜解剖学講座
3)九州歯科大学・実験動物施設

マウス子宮NK（uNK）細胞の消長と着床�分娩の関連を解明するため、着床遅延（DI）または分娩遅延（DP）を誘導したマウスにおける子宮NK細胞の形態について観察を行った。DIマウスは妊娠3日に卵巣を摘出し、その日から1日2 mgのプロジェステロンを反復投与することで作製した。分娩遅延マウスは妊娠15日または17日からサンプリングを行った日まで、妊娠マウスに24時間ごとに前述の量のプロジェステロンを反復投与することで作製した。妊娠8日のDIマウスではuNK細胞はPAS陽性顆粒を獲得していた。しかしながら対照群と比較すると、DIマウスのuNK細胞は小さくその分化は遅れていた。妊娠19～21日のDPマウスでは、間膜腺は維持されており、その中にuNK細胞も存在していた。妊娠21日のDPマウスでは、子宮NK細胞の顆粒は減少または消失していた。これらの結果から、着床はuNK細胞の分化に直接関与しないが、分娩はこの細胞の消失にプロジェステロンを介し、密接に関わっていることが示唆される。

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妊娠および非妊娠マウス子宮におけるIL-6受容体ｍRNAの局在（J. Reprod. Dev. 51: pp. 777-781, 2005）
本道栄一1,2)・國分啓司2)・加藤かほり1)・木曾康郎1,2)

1)山口大学農学部・家畜解剖学講座
2)山口大学大学院連合獣医学研究科

マウスの妊娠におけるIL-6ファミリーの役割を解析するため、in situ hybridizationによって非妊娠あるいは妊娠早期の子宮でのIL-6受容体mRNAの局在を調べた。IL-6受容体のｍRNAは非妊娠および妊娠3～6日の子宮で発現していた。非妊娠マウスでは、IL-6受容体のmRNAは子宮管腔上皮および子宮腺上皮に検出された。このシグナルの強さは性周期の段階によって変化した。性周期中に単相性の上昇を見せるプロゲステロンやエストロゲンの血中濃度と、IL-6受容体ｍRNAのシグナルの強さには関連性が無いようであった。妊娠マウスでは、わずかなシグナルが妊娠3日の子宮管腔および子宮腺上皮より検出された。IL-6受容体ｍRNAは妊娠4日には増加したが、妊娠5日にはその局在は大きく変化していた。妊娠5日になると、間質細胞は突如このmRNAを発現し、妊娠6日には強く発現していた。着床期には、子宮管腔上皮および子宮腺上皮に存在するIL-6受容体の機能は、間質細胞に存在するそれとは異なっているかもしれない。また、妊娠6日においては上皮直下の間質細胞にはシグナルはほとんど認められなかった。このことは、妊娠6日のマウスには二種類の間質細胞の存在することを示唆している。

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シクロヘキシミドへの曝露が電気的に活性化したネコ卵母細胞の発育に及ぼす効果（J. Reprod. Dev. 51: pp. 783-786, 2005）
Ni Wayan Kurniani Karja1)#・音井威重1)・村上昌子1)・Pimprapar Wongsrikeao1)・Agung Budiyanto1)・Mokhamad Fahrudin1)##・永井　卓2)

1)山口大学農学部獣医学科
2)（独）農業・生物系特定産業技術研究機構・畜産草地研究所
#現所属: （独）農業・生物系特定産業技術研究機構・畜産草地研究所
##現所属:（独）農業生物資源研究所・遺伝資源研究グループ

本研究では、電気刺激後のシクロヘキシミドとの複合活性化処置がネコ卵母細胞の単為発生能に及ぼす効果を検討した。体外成熟したネコ卵母細胞を2 kV/cmの直流パルスで50秒間、電気的に活性化した後、10 µg/mlのシクロヘキシミドを添加もしくは無添加のMK-1培養液で5時間培養し、その後の体外発生能を比較した。両区において、分割率、桑実胚への発生率および胚盤胞の構成細胞数において差は認められなかった。しかしながら、電気刺激後、卵母細胞をシクロヘキシミドに曝露することにより、胚盤胞への発育が有意に向上することが認められた。以上の結果から、体外成熟ネコ卵母細胞を活性化処置する場合、1回の電気刺激のみでは不十分であり、電気刺激とシクロヘキシミドを用いた複合活性化処置が効果的であることが示唆された。

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マウスの発情周期における着床関連遺伝子の発現について（J. Reprod. Dev. 51: pp. 787-797, 2005）
李　東洙1)・植田（柳本）佳子1)・玄　学南1)・五十嵐郁男1)・藤崎幸蔵1)・杉本千尋1)・豊田　裕1)・鈴木宏志1,2)

1)帯広畜産大学・原虫病研究センター・ゲノム機能学分野
2)東京大学大学院・医学系研究科・発生・医療工学講座

着床過程に関与していると考えられているEGF、HB-EGF、Amphiregulin、EGF 受容体、IGF-1、CSF-1、IL-1 alpha、IL-1 beta、IL-1受容体 type 1、IL-1受容体アンタゴニスト、LIF、COX-1、COX-2、Mucin-1、calcitoninおよびラットUSAG-1マウスホモローグについて、マウス性周期の各ステージにおける子宮でのmRNAの発現をリアルタイムPCR法によって解析した。COX-2、HB-EGF、LIF、Mucin-1、CSF-1、IL-1 alpha、IL-1 betaおよびIL-1受容体アンタゴニストでは、性周期に依存した発現が観察され、発情期において最も高いmRNAの発現が認められた。また、COX-1、EGF、IGF-1、EGF 受容体においては、発情休止期に最も高いmRNAの発現が観察された。これに対して、ラットUSAG-1マウスホモローグの子宮におけるmRNAの発現には、卵巣ホルモンの依存性は観察されなかった。着床時期におけるラットUSAG-1マウスホモローグの発現は、母体側よりもむしろ胚由来の因子に調節されていると考えられた。

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ベージュ（DA-bg/bg）ラットの顆粒間膜腺（GMG）細胞の組織学的研究（J. Reprod. Dev. 51: pp. 799-803, 2005）
本道栄一1,2)・國分啓司2)・長久アユサ1)・中牟田信明3)・尾崎清和4)・佐加良英二5)・木曾康郎1,2)

1)山口大学農学部・家畜解剖学講座
2)山口大学大学院・連合獣医学研究科
3)九州歯科大学・口腔解剖学第一講座
4)摂南大学薬学部・薬物安全科学研究所
5)九州歯科大学・実験動物施設

ラットの正常な妊娠過程に対する顆粒性間膜腺（GMG）細胞の役割を明らかにするため、妊娠期間を通じたベージュラット（NK細胞は細胞質内顆粒の異常によってライソゾームの機能障害を示す。遺伝子型：DA-bg/bg）GMG細胞の形態を、光学および電子顕微鏡にて検討した。ベージュラットのGMG細胞は、二つの対照群（遺伝子型：DA-bg/+ 及びDA-+/+）のGMG細胞に比べて、妊娠中期および後期に有意に少なかった。このとき、ベージュラットにおいて胎子数の減少が認められた。ベージュラットにおけるGMG細胞の細胞内顆粒は、妊娠同時期の二つの対照群における顆粒の大きさよりも大きかった。これらの結果から、ラットのGMG細胞は、末梢NK細胞と同様にベージュ遺伝子によって影響を受けること、ベージュ遺伝子はこの変異ラットにおいて生殖能力に影響を及ぼす可能性が示唆された。

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非繁殖期における2種類の膣内挿入器具を用いた雌羊の発情誘起と受胎性の比較（J. Reprod. Dev. 51: pp. 805-812, 2005）
河野博英1)・岡本智香1)・飯田憲司2)・武田智子2)・金子悦史3)・川島千帆3)・宮本明夫3)・福井　豊2)

1)家畜改良センター十勝牧場
2)帯広畜産大学　食料生産科学講座
3)帯広畜産大学　畜産生命科学講座

本研究では、非繁殖期の雌羊におけるCIDR（controlled internal drug release）とPクリーム（500 mgプロゲステロン含有膣内クリーム）による発情誘起効果を比較した。実験1では、24頭の雌羊を無作為にA群（CIDR）とB群（Pクリーム）の2群に分け、2種類の膣内挿入器具を12日間膣内に挿入した。また、これらの雌羊から血液を採取し、血漿中のプロゲステロン（P₄）、エストラジオール17-β（E₂）および黄体形成ホルモン（LH）濃度を測定した。実験2では、CIDR（A群）またはPクリーム（B群）で処置された127頭の雌羊に自然交配、発情発見12時間後の人工授精（発情発見AI）または、膣内器具除去42時間後の人工授精（定時AI）を行い、その受胎率を比較した。試験1における発情誘起率と処置後の発情開始時間は、A群が91.7%、36.3±15.7 h、B群が100%、35.0±12.6 hで、両手法間に有意な差は認められなかった。血漿中の平均P₄濃度はday-9からday-1（day 0は器具除去日）にかけてB群がA群に比べて有意に低かった（P.>0.01）。しかし、E₂濃度については両群に有意差は認められなかった。LH サージが確認された雌羊における処置後の発情開始時間とLHサージ時間は、それぞれＡ群が23.3±8.7 hと30.3±5.0 h、Ｂ群が27.6±6.5 hと26.3±8.0 hで、有意差は認められなかったが、発情開始からLHサージまでの平均時間にはA群（6.4±6.7 h）とB群（-1.3±4.1 h）の間に有意な差が認められた（P<0.05）。実験2における自然交配、発情発見AIおよび定時AIの受胎率は、それぞれA群が55.0、29.4、25.0%、B群が40.7、25.0、42.1%で両群に有意な差は認められなかった。以上の結果から、Pクリーム法は処置期間中における血漿P₄濃度が低い傾向にあったが、CIDRと同等の発情および排卵の誘起効果と受胎率が得られることが示された。

［英文要旨＆PDF］