vol. 50-5 (2004)

ブタ卵胞における選択的閉鎖の制御機構：顆粒層細胞アポトーシスの制御（J. Reprod. Dev. 50: 493-514, 2004）

眞鍋　昇1)・後藤康文2)・松田-峯畑二子3)・井上直子4)・前田晃央2)・酒巻和弘5)・宮野　隆6)

1)東京大学農学生命科学研究科高等動物教育研究センター
2)京都大学農学研究科応用生物科学専攻生体機構学
3)東京大学農学生命科学研究科獣医学専攻動物育種繁殖学
4)名古屋大学生命農学研究科動物形態情報学
5)京都大学生命科学研究科高次生命科学専攻高次遺伝情報学
6)神戸大学農学部応用動物学科応用動物遺伝学

　排卵にいたる過程で99%以上が選択的に死滅してしまう卵胞閉鎖の分子制御機構を、完全性周期動物であるブタの卵巣を材料としてこれまでに調べてきた知見をまとめた。卵胞閉鎖の極初期に卵胞腔側の顆粒層細胞にアポトーシスが誘導され、これが隣接する細胞に急速に広がって速やかに卵胞は閉鎖する。顆粒層細胞には、細胞死リガンドと細胞死受容体を介して選択的にアポトーシスが誘導されるが、この細胞はII型アポトーシス細胞（細胞死受容体を介する細胞内アポトーシスシグナルがミトコンドリアを介して伝わる）である。顆粒層細胞には細胞特異性の高い新規な細胞死受容体を含む様々な細胞死リガンド・細胞死受容体系が発現しているが、どれがドミナントに働いてアポトーシスを誘起しているのか未解明である。また、TNFαとその受容体TNFR2のように生存・増殖因子として働いているものもあり、作用モードは単純ではない。最近、健常な卵胞の顆粒層細胞に囮受容体や細胞内アポトーシス阻害因子（cFLIP）が発現していて、アポトーシス誘導を阻害して卵胞閉鎖を制御しているであろうことを見出した。顆粒層細胞アポトーシスの分子制御機構が判明すれば、排卵にいたるであろう健全な卵胞と閉鎖するであろう不健全な卵胞が判別でき、生殖工学に供する卵母細胞の質を的確に評価できるようになることが期待される。

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妊娠後半期マウス胎盤におけるカテプシン遺伝子発現（J. Reprod. Dev. 50: 515-523, 2004）

石田充代・小野孝太・田口幸子・大橋　聡・内藤純一郎・堀口幸太郎・針谷敏夫

明治大学農学部生命科学科生体機構学研究室

　胎盤は哺乳類に特有の器官で、呼吸、代謝、排泄、免疫機能、内分泌といった多岐の作用を持つ。我々はこのなかで、胎盤の内分泌器官としての作用に注目している。今回我々は、カテプシンと胎盤性ラクトゲン（PL）の関係について着目し、妊娠（P）12,14,16日マウス胎盤での発現遺伝子のサブトラクション解析を行った。その結果、胎盤特異的カテプシンファミリーが時期特異的に発現していることが明らかになった。そこでさらに、カテプシンファミリー中のカテプシンM, Q, R についてRT-PCRとNorthern blotting を行ったところ、マウス胎盤性ラクトゲンII（mPL-II）とカテプシン M, Q, Rがマウス胎盤の同じ時期で発現していること、In situ hybridizationと蛍光免疫染色の二重染色を行い両者が胎盤の同じ細胞、Labyrinthine trophoblast cell, Trophoblast giant cellにおいて発現していることを観察した。

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ブタおよびクロミンククジラ卵細胞質の脂質分析と電子顕微鏡による微細構造の比較（J. Reprod. Dev. 50: 525-532, 2004）

藤平拓磨1)・木下幹朗2)・佐々木基樹3)・大西正男2)・石川　創4)・大隅清治4)・福井　豊1)

1)帯広畜産大学・畜産科学科・家畜増殖学研究室
2)帯広畜産大学・畜産科学科・生物機能化学研究室
3)帯広畜産大学・獣医学科・獣医解剖学研究室
4)日本鯨類研究所

　これまでの研究からクロミンククジラの卵母細胞において未成熟固体から得られた卵母細胞と成熟個体から得られた卵母細胞では細胞質の色調に差があることが観察された。この色調の差は細胞質内の脂質含量に関連していると考えられる。そこで本研究では細胞質の色調の差を明らかとするため、未成熟および成熟クロミンククジラから得られたガラス化加温後の卵母細胞の脂質含量（コレステロール、リン脂質、トリグリセリド、遊離脂肪酸）および電子顕微鏡による微細構造を比較した。更に異種間の比較のために新鮮およびガラス化加温後のブタ卵母細胞も同様に脂質分析、電子顕微鏡観察を行った。実験には2001/2002年南極海鯨類捕獲調査（JARPA）で捕獲されたクロミンククジラの卵母細胞（n=2,400）と，屠畜場由来のブタ卵母細胞（n=2,750）を用いた。ガラス化には40％エチレングリコール（EG）と0.5 M シュクロース（Suc）を含む20％NBCS添加D-PBS液（HM）を用いた。脂質分析では，未成熟、成熟クロミンククジラの卵母細胞内の脂質含量はブタ卵母細胞内の脂質含量と同様に高かった。電子顕微鏡による観察では，未成熟クジラの卵細胞質には細胞質全体に、成熟クジラでは主に中心部に多く脂肪滴が存在していた。以上の結果から，クロミンククジラの卵細胞質の色調の違いは脂肪滴の分布様式の違いに起因すると考えられた。

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精子侵入直後のラット卵子の限定培地における発生維持に必要な前培養液中の因子（J. Reprod. Dev. 50: 533-540, 2004）

楊　信志1)・韓　明淑1,2)・丹羽晧二1,3)・Philip M. Iannaccone4)

1)岡山大学大学院自然科学研究科
2)現所属：韓国・晋州産業大学・分子細胞遺伝学研究室
3)岡山大学農学部・総合農業科学科・家畜繁殖学研究室
4)Children�s Memorial Institute for Education and Research, Northwestern University Feinberg, School of Medicine, USA

　ラット1-細胞期胚の発生用に開発された限定培地（mR1ECM）を用いて精子侵入直後の卵子を直接培養すると胚盤胞への発生が抑制されるが、他の培地（mKRB）で一定時間前培養すると卵子は高率に胚盤胞へと発生する。本研究では、mR1ECMでの発生維持のために必要な前培養中の因子について調べた。Wister系成熟雌ラットから採取した精子侵入直後の卵子を、卵丘細胞除去後に異なる条件を有した培地に移し、5時間前培養（37℃、5% CO2、95%空気）し、その後、mR1ECMで培養を継続した。その結果、前培養に304 mOsMの浸透圧を有するmKRBを用いた場合には、培地中のリン酸（Pi）の有無は胚盤胞への発生に影響を及ぼさなかった。しかし、Piの有無に係わらず、BSAをPVAと置換してmR1ECMと同じ浸透圧（246 mOsM）に調整したmKRBで前培養すると、胚盤胞形成率は有意に低下した。つぎに、PVAをBSAと置換して浸透圧を304 mOsMに調整したmR1ECMで前培養した結果、Pi不含のmKRBでの前培養に等しい胚盤胞形成率が得られた。PVAをBSAと置換したmR1ECMにおいて、浸透圧をsorbitolの添加により304 mOsMに調整した場合にも、高い胚盤胞形成率が得られた。これらの結果から、精子侵入直後のラット卵子のmR1ECMでの胚盤胞への発生には、前培養液中のBSAと浸透圧の両者が重要であることが推察された。

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無血清培養液中で発育させたウシ卵母細胞の体外受精（J. Reprod. Dev. 50: 541-547, 2004）

千本正一郎1)・福見善之2)・浜脇　淳3)・吉川基一3)・宮野　隆4)

1)神戸大学大学院自然科学研究科
2)徳島県立農林水産総合技術センター畜産研究所
3)家畜改良事業団家畜バイテクセンター神戸分室
4)神戸大学農学部

　ウシ初期胞状卵胞内の直径90～99 μmの卵母細胞を無血清培養液中で16日間発育培養すると、卵母細胞は高率に最終的な大きさへと発育し、その後の成熟培養によって第II減数分裂中期へと成熟する。本実験では、発育培養後の卵母細胞を体外で成熟させたのち体外受精し、卵母細胞の受精および初期発生能力について検討した。ウシの卵巣から採取した直径0.4～0.7 mmの初期胞状卵胞を無血清培養液中で16日間培養したのち、卵胞から卵母細胞－卵丘細胞複合体を取り出して成熟培養し、媒精した。媒精10～12時間後、28%（41/145）の卵母細胞が精子の侵入を受けた。このうち18個（12%）は雌雄前核を1個ずつ形成し、また10個（7%）は1個の雌性前核と1個の膨化精子頭部を有し、正常な受精像を示した。媒精した卵母細胞を体外で発生させたところ、48時間後に2細胞期へと発生した卵母細胞が観察された。媒精72～96時間後には、4細胞期や5～8細胞期へと発生した卵母細胞が見られたが、媒精8日まで胚盤胞への発生は観察されなかった。これらの結果から、無血清培養液中で発育した卵母細胞は受精しうるが、発生能力は十分に獲得していないことが示唆された。

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ブタcellular FLICE-like inhibitory protein遺伝子のクローニングと発現解析（J. Reprod. Dev. 50: 549-555, 2004）

後藤康文1,4)・松田-峯畑二子2,4)・井上直子3)・松井俊勝1)・前田晃央1,4)・眞鍋　昇4)

1)京都大学農学研究科応用生物科学専攻生体機構学
2)東京大学農学生命科学研究科獣医学専攻動物育種繁殖学
3)名古屋大学生命農学研究科動物形態情報学
4)東京大学農学生命科学研究科高等動物教育研究センター

　選択的な卵胞閉鎖を支配的に調節している顆粒層細胞アポトーシスの分子制御機構を解明する一環として、細胞死受容体を介した細胞内アポトーシスシグナルの伝達を抑制するブタのcFLIP遺伝子をクローニングした。ブタ卵胞顆粒層細胞cDNAライブラリーから選択的スプライシングによって生じる2種のアイソフォーム（long form：cFLIP_Lおよびshort form：cFLIP_S）を同定した。これらはヒトおよびマウスと高い相同性を示した。どちらもそのN末端側に二連のdeath effector domain（DED）を有し、他のシグナル伝達因子とこれらを介して結合することでアポトーシスシグナル伝達を阻害すると考えられた。cFLIP_SのC末端は短かったが、cFLIP_Lはカスパーゼ様領域を持っていた。RT-PCR解析によると、健常卵胞顆粒層細胞では両cFLIPアイソフォームとも強く発現していた。これらの所見からcFLIPはブタ卵巣顆粒層細胞におけるアポトーシス制御に重要な役割を果たしていることが推察された。

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アタキシン1をコードする脊髄性運動失調症原因遺伝子1（SCA1）が株化LH産生細胞LβT2に多く発現している（J. Reprod. Dev. 50: 557-563, 2004）

小川智史1,2)・相川優子3)・加藤たか子3)・富澤恭子2)・束村博子4)・前多敬一郎4)・Nezka Petric5)・Folkmar Elsaesser5)・加藤幸雄2,3)

1)RIKEN脳科学総合研究センター・神経構築
2)群馬大学生体調節研究所
3)明治大学農学部生命科学科
4)名古屋大学大学院・生命農学研究科
5)Institute for Animal Science and Animal Behavior

　下垂体腫瘍由来の株化細胞でLHを産生する細胞株LβT2とLHを産生しない細胞株αT3-1について、LH産生細胞LβT2に特有に発現する遺伝子を解析するためcDNAサブトラクションクローニングを行った。その結果、既知の遺伝子に相同な複数のcDNAクローンと多数の未知遺伝子のcDNAクローンが得られた。既知クローンの中に、脊髄性運動失調症の原因と考えられているアタキシン1をコードするSCA1遺伝子があり、LH産生細胞に特有に発現していることを発見し、この発現の特異性は他の下垂体腫瘍由来の株化細胞より調製したmRNAを用いたRT-PCRにより確認した。さらに、発現がLH産生細胞に特徴的であることから、雌ラットの性周期や去勢したラットについてステロイド投与による SCA1遺伝子のmRNAの変動をRT-PCR法により解析した。その結果、性周期での変動は無く、卵巣や精巣の摘除によりmRNA量はそれぞれ約2倍、3倍に増加した。卵巣および精巣摘除後のステロイドの投与は増加した量を幾分下げるものの、去勢前のレベルに減少することは無く、ステロイド以外の性腺由来因子が下垂体での発現に関与する可能性が示唆された。SCA1遺伝子の個体発生過程での下垂体での発現変動をブタの胎児および出生後の下垂体から調製したmRNAを用いて、RT-PCR法で調べた。その結果、雌雄の40日の胎児期ですでにSCA1遺伝子は発現しており、雌の方が高レベルであった。その後出生までの間に発現が確認されないレベルに減少するなど激しい発現変動を示し、その様子は雌雄で異なっていた。出生後は雌雄ともに同じレベルで生後230日までの間に変化は認められなかった。以上のことから、脊髄性運動失調症の原因と考えられているSCA1遺伝子はLH産生細胞に特有に発現しており、性腺組織に存在するステロイド以外の因子によりその発現が抑制的調節を受けている事が明らかとなった。また、下垂体の発生過程での本遺伝子の発現は性差を示すとともに胎児期で大きな変動を示していた。こうした実験結果は、Boucher Neuhauser 症候群（Ataxia Hypogonadism Choroidal Dystrophy）における低下垂体機能の原因解明に新知見となることが期待される。

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マウス精巣におけるプリオン遺伝子mRNA発現パターンについて（J. Reprod. Dev. 50: 565-570, 2004）

藤澤正彦1)・金井克晃1)・南　相充4)・前田誠司5)・中牟田信明6)・加納　聖3)・九郎丸正道1)・林　良博2)

1)東京大学農学生命科学研究科獣医解剖学教室
2)東京大学農学生命科学研究科国際動物資源科学教室
3)東京大学農学生命科学研究科応用遺伝学教室
4)Department of Anatomy and Molecular Cytoinformatics, College of Veterinary Medicine, Chungbuk National University, Korea
5)兵庫医科大学解剖学第一講座
6)九州歯科大学口腔解剖学第一講座

　正常型プリオン蛋白（PrP^c）はGPIアンカリング膜糖蛋白として細胞膜上に存在していることから細胞間の情報伝達や細胞間接着などに関与している可能性がある。プリオン蛋白は脳のみならず他の主要臓器においてもその発現が認められている。今回、精巣におけるPrnp （mRNA）発現パターン並びにその局在を解析する目的でノーザンブロットおよびin situ hybridizationを行った。ノーザンブロットでは2.2 kb並びに1.1 kbの二つの転写産物が精巣において確認された。2.2 kbの転写産物は発育段階を通じて確認されたが、1.1 kbの転写産物は2週齢以降より観察された。また、in situ hybridizationの結果よりPrnpに対する成熟マウス精巣において精母細胞から円型精子細胞にかけて強いシグナルが認められたが、伸長型精子細胞や精子、体細胞であるセルトリ細胞、ライディッヒ細胞並びにマイオイド細胞にはシグナルは観察されなかった。以上、マウス精巣におけるPrnp mRNAの発現は精細管内の細胞に集中して認められ、活発な増殖能を有する精祖細胞を基点とした精子形成に関与することが示唆された。

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精子発生・精子成熟過程でのマウスADAM3の生合成、プロセシング、および細胞内局在に関する解析（J. Reprod. Dev. 50: 571-578, 2004）

金　益均1)・西村　仁1,2)・岩瀬茂樹1)・山縣一夫1)・柏原真一1)・馬場　忠1)

1)筑波大学大学院生命環境科学研究科・応用生物化学系
2)カリフォルニア大学ディビス校分子細胞生物学セクション

　精子発生・精子成熟過程でのマウスADAM3の生合成、プロセシング、および細胞内局在を明らかにするために、アフィニティー精製抗ADAM3抗体を用いて精巣生殖細胞と精巣上体・精管精子の免疫ブロッティングと免疫組織化学的解析を行った。ADAM3は110キロダルトン前駆体として精巣円形精子細胞で合成されはじめ、精子の精巣上体への移動、あるいは精巣上体頭部通過の際に42キロダルトンの成熟型タンパク質にプロセシングされることが明らかとなった。免疫組織化学的観察によって、成熟型ADAM3は精巣上体・精管精子の頭部細胞膜表面に局在していることが見出された。興味あることに、カルシウムイオノフォアA23187でアクロソーム反応を誘導すると、ADAM3は迅速に精子表層から脱離した。以上の結果は、ADAM3が精子と卵子の膜融合ではなく、精子と卵子透明帯の結合に関与していることを示唆している。

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メンブレンインサートを用いたマウス二次卵胞の体外培養と培養卵胞から排卵された卵子の発生能（J. Reprod. Dev. 50: 579-586, 2004）

Ahmed Abdel Gadir Adam・高橋芳幸・片桐成二・永野昌志

北海道大学大学院獣医学研究科

　マウスの二次卵胞（直径150～200 μm）を卵巣から機械的に単離してメンブレンインサートあるいは微小滴中で個別に5～6日間培養したのち、培地（αMEM）にhCGを添加して排卵を誘起した。その結果、メンブレンインサートおよび微小滴中で培養した卵胞の生存率（83 vs. 77%）に有意差は認められなかった。しかし、メンブレンインサート中で培養した卵胞の方が排卵率は高かった（63 vs. 39%、P<0.05）。そこで、メンブレンインサート中で培養した卵胞から排卵された卵子の核相および発生能を調べた。その結果、排卵卵子は約80%が第二成熟分裂中期にあり、体外受精後に約50%の卵子が胚盤胞に発育することが分かった。これらの結果から、体外培養により発育および排卵した卵胞に由来する卵子が発生能を有することが確認され、メンブレンインサートを用いた卵胞培養法がマウス卵胞の発育および排卵機構の研究に活用できることが示唆された。

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体外生産ブタ胚の体外培養における培地中のピルビン酸塩／乳酸塩のグルコースへの置換時期が胚発生におよぼす影響（J. Reprod. Dev. 50: 587-592, 2004）

Ni Wayan Kurniani Karja2)・Sergey Medvedev1)・大西　彰1)・淵本大一朗1)・岩元正樹1,3)・音井威重2)・
永井　卓4)

1)（独）農業生物資源研究所・発生分化研究グループ
2)山口大学農学部獣医学科
3)プライムテック株式会社
4)（独）・農業・生物系特定産業技術研究機構・畜産草地研究所

　実験1：体外生産ブタ胚をピルビン酸塩／乳酸塩を基質として添加した修正NCSU-37（IVC-pyr/lac）中で0、24、48 、72 、96 あるいは、118時間培養した後に、基質をグルコースに置換した修正NCSU-37（IVC-glu）中でDay 6（体外受精日をDay0とする）まで培養した。その結果、IVC-pyr/lac中で24時間あるいは48時間培養した場合に、それぞれ、24.4%および23.0%の胚盤胞期胚発生率が得られ、IVC-pyr/lac中で118時間培養した場合（14.5%）と比べて、有意に高い値を示した。しかし、IVC-glu中で118時間培養した場合（16.8%）と、ピルビン酸塩／乳酸塩からグルコースへと置換した場合（15.2%�24.4%）とを比較したところ、その値に有意差はなかった。実験2：培地中の基質としてのピルビン酸塩／乳酸塩のグルコースへの置換を、受精後、48、53、58あるいは、63時間に行い、体外生産ブタ胚の胚盤胞期胚への発生率を比較した。その結果、58時間後に置換した場合に、48、53および63時間の場合と比較して、有意に高い発生率が得られた。従って、体外生産ブタ胚の胚盤胞期胚への発生には、体外発生培地中のピルビン酸塩／乳酸塩のグルコースへの置換を、受精後58時間に行うことが有効であると結論された。

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ウシ体細胞核移植卵由来胚盤胞の凍結保存：発育ステージが凍結融解後の生存性に及ぼす影響（J. Reprod. Dev. 50: 593-598, 2004）

Dasari Amarnath・加藤容子・角田幸雄

近畿大学農学部

　体細胞核移植後8日目のウシ胚盤胞を、発生ステージによって後期胚盤胞と初期胚盤胞に分けて凍結し、融解後の生存性を比較検討した。核移植は、胎子繊維芽細胞を除核未受精卵に電気融合して行い、8日間培養して得られた胚盤胞を形態によって後期ならびに初期胚盤胞に区分した。ついで、耐凍剤として1.5 Mエチレングリコールを用いて－35℃まで緩慢に凍結後、液体窒素内に保存した。融解は急速に行い、24ならびに48時間培養して生存率を調べた。また、対照区として体外受精後8日目に得られた胚盤胞を同様に2群に分け、凍結融解後の生存率を調べた。その結果、核移植区ならびに体外受精区のいずれにおいても、後期胚盤胞の生存率は初期胚盤胞の生存率に比べて有意に高かった（核移植区86 vs 14%; 体外受精区 87 vs 30%）。この原因として、後期胚盤胞の総細胞数、内細胞塊ならびに栄養外胚葉の細胞数が、いずれも初期胚盤胞の細胞数に比べて有意に多いことによると考えられた。

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蛍光レポーター遺伝子を用いたブタ顆粒膜細胞におけるRNA干渉の有効性（J. Reprod. Dev. 50: 599-603, 2004）

平野拓郎・山内伸彦・佐藤文規・宗　知紀・服部眞彰

九州大学大学院農学研究院・動物資源科学部門・家畜繁殖生理学分野

　遺伝子ノックアウトに代わる低分子の2本鎖RNA（siRNA）導入によるジーンサイレンシングは、動物を選ばず細胞分化の過程で発現する遺伝子の機能解析に有効な方法であることが期待されている。本研究は、細胞分化を誘導したブタ顆粒膜細胞におけるRNA干渉（RNAi）の適用について、緑色（GFP）と赤色（RFP）蛍光タンパク質をコードする2種の蛍光レポーター遺伝子を用いて検討した。GFPのmRNA配列をターゲットにしたsiRNAを両遺伝子とともにリポフェクションにより培養19時間後の細胞に導入し、GFPおよびRFPを発現する細胞は蛍光顕微鏡およびフローサイトメーターにより観察・分析を行った。両遺伝子を細胞に導入して72時間後に各々強い蛍光が観察されたが、70 nMのsiRNAを導入するとGFPによる緑色の蛍光は強く抑制された。GFPおよびRFPによる蛍光発光を比（GFP/RFP）で表すと、siRNAはGFPレポーター遺伝子の発現を約70%抑制することが示された。また、140 nMのsiRNAではRFPの発現に減少が認められたことから、細胞への導入量によっては非特異的な遺伝子発現の抑制が考えられた。以上のことから、siRNAを用いたジーンサイレンシングはブタ顆粒膜細胞の分化過程で発現する遺伝子の機能解析に有効であるものと考えられる。

［英文要旨＆PDF］

Volume 50, Number 5(2004)