vol. 50-1 (2004)

着床前期における胚仔と子宮のコミュニケーション：一連の遺伝子群発現と協調により導かれる着床（J. Reprod. Dev. 50: 155-169, 2004）

今川和彦1)・Kyu-Tae CHANG2)・Ronald K. CHRISTENSON3)

1)東京大学大学院農学生命科学研究科　動物育種繁殖学教室着床研究グループ
2)Laboratory of Primate Research, Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology, Korea
3)Meat Animal research Center, U.S. Department of Agriculture, U.S.A.

　着床は妊娠の成立には不可欠な一連の生命現象であり、母親の子宮内膜細胞の増殖と分化、胚仔の発達、接着や浸潤、そして初期胎盤形成までの過程が含まれる。受精卵が子宮内で着床を完了するまでには、子宮（とくに子宮内膜）と胚仔の増殖や分化が同期化される必要がある。これまでに着床前後期の子宮や胚仔に発現する数々のファクターが発見されてきた。しかし、着床を直接的に制御する根本的な因子が何であるかという解析は、ファクター同士の相互作用やシグナル伝達経路のクロストークが複雑に絡み合っているため困難を極めてきた。本稿では、着床過程の説明で従来とり上げられる接着や浸潤に関与するファクターではなく、胚仔の発達、子宮の準備やこれらの現象に関与するそれぞれのファクターの相互作用に注目し、着床前期の現象を子宮と胚仔のコミュニケーションが重要であると捉えた。着床に関与する転写因子群などの新しい知見を踏まえつつ、それぞれのファクターの連続的な発現と、これらによって制御されるファクターのオートクラインやパラクライン応答の機能に注目した。反芻動物による知見が少ない研究領域では、げっ歯類からの情報を参照し、着床には子宮と胚仔の遺伝子発現と両者のコミュニケーションの確立が必須条件であるというテーマを掲げた。

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ウシ顕微授精後のエタノール処理が卵子のMPF活性に及ぼす影響J. Reprod. Dev. 50: 171-178, 2004）

藤浪菜穂子1)・細井美彦1,2)・加藤博己2)・松本和也1,2)・佐伯和弘1,2)・入谷　明1,2)

1)近畿大学大学院生物理工学研究科
2)近畿大学先端技術総合研究所

　ウシの細胞質内精子注入法(ICSI)では、胚が前核期をこえて発生を継続するには、ICSI胚への活性化処理が必要な事が知られている。MPF活性は卵子の減数分裂の進行に同調して変動する。本実験では、ICSI後のエタノール処理が卵子のMPF活性の動態と胚発生に及ぼす影響を検討した。ICSI後4時間目に7%エタノールにより5分間活性化処理を行った区での前核期胚への発生率、卵割率、胚盤胞期胚への発生率はそれぞれ91%、51%、14%で、エタノール処理を行わなかった区に比べ有意に高かった（71%、13%、4%）。MPF活性は、ICSI後2時間目に低下した。ICSI後エタノール処理を行わなかった区では、ICSI後6時間目にMPF活性の一時的な上昇が認められたが、エタノール処理を行った区では観察されなかった。また、ICSI後エタノール処理を行わなかった区では、次の細胞周期にむけたMPF活性の上昇が認められなかったが、エタノール処理を行った区では上昇した。以上の結果より、ICSI後のMPF活性の低下には精子注入のみで十分であると考えられた。また、エタノール処理は、ICSI後6時間目におけるMPF活性の一時的な上昇を抑制する効果があることが認められた。ICSI後のエタノール処理はICSI後のMPF活性に影響を及ぼし、その後の胚発生を促進することが示唆された。

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In vivoにおけるマウス卵母細胞の死の形態（J. Reprod. Dev. 50: 179-183, 2004）

Eun-A LIM・Tae-Saeng CHOI

Department of Microbiology, College of Medicine, Dankook University, Anseo, Korea/GenCross Biotec Institute, Korea

　抗ガン剤などによるin vitroでの卵母細胞の死に関する報告は多いが、in vivoにおける所見が乏しい。若齢雌マウスにhCG処理した後、経時的に卵管から卵母細胞を回収し、形態学的にI型（核分裂、細胞質分裂のない単細胞の非活性型卵母細胞）、II型（単細胞、2細胞あるいは4細胞の活性型卵母細胞）、III型（崩壊卵母細胞）およびIV型（死卵母細胞）に分類した。時間経過とともにI型が減少し、IV型が増加した。しかしII型もIII型も増加しなかった。即ちほとんどの死卵母細胞は単細胞であったので、抗tubulin抗体を用いた蛍光抗体法にて紡錘体形成を調べた結果、hCG処理24時間後の全ての卵母細胞には正常な2極性紡錘体が観察されたが、64時間後には観察されなくなっていた。In vivoでは、単細胞の非活性型卵母細胞の状態からすぐに死にいたることが分かった。

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マウスの超音波による胎児発育障害と麻酔（J. Reprod. Dev. 50: 185-190, 2004）

ハクFシャンタ1)・和泉俊一郎1)・相川浩幸2)・鈴木隆弘1)・松林秀彦1)・村野孝代1)・貴家　剛・池田仁恵1)・呉屋憲一1)・牧野恒久1)

1)東海大学医学部　専門診療学系（産婦人科）
2)東海大学医学部　基盤診療学系（環境保健）

　ストレスは、生殖機能に重大な影響を及ぼし、着床阻害、胎児発育障害、さらには胎児死亡や流産をおこす。我々は、初期妊娠マウスに超音波を暴露し、その影響を特に胎児について検討した。10週齢のJcl:ICRマウスに100 dbで9～34 KHzのランダム周波数の超音波を8時間、妊娠3、5、7日目に暴露した。妊娠18日目に胎児発育を、胎盤と胎児体重、仙椎尾骨部の骨化数（以下　仙尾骨数、number of ossified sacrococcygeal vertebrae）等で検討した。妊娠初期では、7日目の超音波暴露のみで有意（p＜0.001）に、胎児発育障害を認めた。さらに、全身麻酔下で７日目に超音波を暴露した場合、有意（p＜0.001）にこの胎児発育障害が解除された。このことから、超音波によるマウスの胎児発育障害は、母体の情動に対するストレスを介した間接的な超音波の作用であると考えられた。また、マウスの胎児発育障害のデータ解析に際しては、仙尾骨数がもっとも鋭敏な指標であることが示唆された。

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ドナーとレシピエントのラット系統は1細胞期卵から体外発育した桑実胚～胚盤胞の産仔発生に影響する（J. Reprod. Dev. 50: pp. 191-195, 2004）

加藤めぐみ1,2)・石川綾子1)・保地眞一3)・平林真澄1,4)

1)岡崎国立共同研究機構・生理学研究所
2)科学技術振興機構・CREST
3)信州大学・繊維学部
4)総合研究大学院大学・生命科学研究科

　ラット前核期卵のドナーにWistar系雌またはSD×DA系F1雌にWistar系雄を交配したもの、桑実胚～胚盤胞のレシピエントにWistar系雌またはSD×DA系F1雌を用い、体外培養胚の産仔発生能について比較した。前核期卵は310 mOsmolのmR1ECM + BSA培地で18時間、246 mOsmolのmR1ECM + PVA培地で78時間、の計96時間培養した。そして桑実胚～胚盤胞に発育したものを偽妊娠3日目および4日目のレシピエント子宮に移植し、17～18日後に帝王切開して産仔への発生率を調べた。前核期卵の桑実胚～胚盤胞への体外発生率は3元交雑種由来胚の方がWistar系由来胚に比べて有意に高かった（74% vs 66%）。Wistar系由来胚の産仔発生率は、Wistar系レシピエントに移植したときでは13～24%、SD×DA系レシピエントでは24%だった。一方、3元交雑種由来胚の産仔発生率は、Wistar系レシピエントよりもSD×DA系レシピエントに移植したときの方が高かった（31～34% vs 42～59%）。もっとも高い産仔発生率（59%）は5日目の3元交雑種由来胚を偽妊娠3日目のSD×DA系レシピエントの子宮環境に戻したときに得られた。以上、体外培養したラット卵子の産仔発生能はドナーおよびレシピエントに用いる系統によって影響された。

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シバヤギの春機発動期における体成長と血漿中代謝産物および代謝関連ホルモン濃度（J. Reprod. Dev. 50: 197-205, 2004）

櫻井勝康1,2)・大蔵　聡1)・松山秀一1,3)・加藤和雄2)・小原嘉昭2)・岡村裕昭1)

1)（独）農業生物資源研究所・生体機能研究グループ・神経内分泌研究チーム
2)東北大学大学院農学研究科・応用生命科学専攻・動物生理学
3)名古屋大学大学院生命農学研究科・応用分子生命科学専攻・動物生殖制御学研究室

　多くの動物種で、春機発動が到来する時期は年齢ではなく体成長や栄養状態と密接に関連していることが知られている。本研究では、雌シバヤギの春機発動の時期を決定し、その前後における体成長と代謝関連物質の変化を明らかにすることを目的とした。雌シバヤギ12頭を供試し、10週齢から38週齢の間で定期的に血液サンプルを採取し、プロジェステロン、代謝産物（グルコース、非エステル化遊離脂肪酸、ケトン体、酢酸）および代謝関連ホルモン（インシュリン、インシュリン様成長因子-I（IGF-I））の血漿中濃度を測定した。採血時には、体重、体高、体長もあわせて計測した。春機発動の到来は、血漿中プロジェステロン濃度が初めて1.0 ng/mlを越えた日とした。その結果、雌シバヤギが春機発動を迎える時期は27.0±0.9週齢であり、その時の体重は12.2±0.5 kg、ヤギ体格指数（体重（kg）/体長（cm）/体高（cm）×10³）は5.7±0.2であった（平均値±標準誤差）。測定したすべての代謝産物の血漿中濃度には、春機発動に関連した変化は特に認められなかった。血漿中インシュリン濃度は、春機発動前は低レベルに保たれたままであったが、春機発動後、次第に増加し始めた。一方、血漿中IGF-I濃度は、春機発動の1から4週間前から次第に増加し、この上昇は春機発動後まで持続していた。これらの結果から、シバヤギでは春機発動の引き金となる末梢の栄養性シグナルとしてIGF-Iが何らかの役割を担っている可能性があることが示唆された。

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精巣特異的ポリAポリメラーゼTPAPトランスジーンの野生型とTPAP欠損マウスでの発現（J. Reprod. Dev. 50: 207-213, 2004）

庄　天1)・柏原真一1)・野口純子2)・馬場　忠1)

1)筑波大学応用生物化学系
2)独立行政法人農業生物資源研究所

　われわれが同定した精巣特異的ポリAポリメラーゼTPAP（PAPβ）は、球状精細胞細胞質での特定mRNAのポリA鎖伸長に関与している。その欠損マウスでは、精子形態形成にかかわる半数体特異的遺伝子の転写活性が減少しているため、精子形成が球状精細胞の段階で停止していた。精子形成におけるTPAPの機能をさらに明確にするために、TPAPトランスジーンを野生型とTPAP欠損マウスで発現させて解析を行った。TPAP過剰発現マウスの精子形成と生殖能は、ともに正常であった。また、TPAPの基質であるいくつかの転写因子のmRNAサイズも野生型と同じであった。TPAP欠損マウスに外来のTPAP遺伝子を導入することにより、特定の転写因子mRNAのポリA鎖伸長不全や半数体特異的遺伝子の転写量の減少は補われ、結果として正常な精子形成が回復した。これらの結果は、TPAPによる細胞質でのmRNAポリA鎖伸長が精子形成に必須のプロセスであることを明確にしており、また細胞質でのmRNAポリA鎖伸長を厳密に制御する機構があることを示唆している。

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ヒト子宮内膜間質細胞においてprogesteroneの消退は、活性酸素によるNF-κBの活性化を介しprostaglandin F2α産生を促進する（J. Reprod. Dev. 50: 215-225, 2004）

杉野法広・原田綾子・竹谷俊明・坂田亜希・中村康彦

山口大学医学部生殖・発達・感染医科学講座（産科婦人科）

　月経時の子宮内膜剥脱にはprostaglandin F2α（PGF2α）の増加が関与することや月経発来のシグナルとしてprogesterone（P）の消退が知られている。しかし、PGF2αの増加の機序については不明である。我々は、活性酸素とその消去酵素である superoxiode dismutase（SOD）が子宮内膜の機能調節に関与していることを報告してきた。今回は、ヒト子宮内膜間質細胞（ESC）においてPの消退による活性酸素とSODを介したPGF2α産生調節機構を検討した。P消退の影響をみるため、ESCを estradiol（E, 10^-8 M）と medroxyprogesterone acetate（MPA, 10^-6 M）で12日間培養した後、培養液のみでさらに11日間培養した。対照は、引き続きE+MPAで11日間培養した。P消退により細胞中のCu,Zn-SOD活性は有意に低下し、培養液中PGF2α濃度とcyclooxygenase-2（COX-2）mRNA 発現は有意に増加した。このPGF2αとCOX-2の増加は抗酸化剤のN-acertyl-L-cycteine（NAC）の添加によって阻止された。次に、Electrophoretic mobility shift assayによる解析で、P消退によりNF-κBの binding活性は著しく増加したが、これはNACの添加によって阻止された。さらに、P消退によるPGF2α産生とCOX-2発現の増加がNF-κB活性化の抑制剤であるMG132の添加により阻止された。以上より、Pの消退により、Cu,Zn-SODの低下と活性酸素の増加がおこり、この活性酸素がNF-κBの活性化を介し COX-2発現とPGF2α産生を増加させることが考えられた。このメカニズムは、PGF2αを介した子宮内膜の剥脱に関与することが示唆された。

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マウスの生殖腺培養系の発生におけるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤トリコスタチンAの影響（J. Reprod. Dev. 50: 227-235, 2004）

水上拓郎1)・藤澤正彦1)・金井克晃1)・九郎丸正道1)・林　良博2)

1)東京大学大学院農学生命科学研究科・獣医解剖学教室
2)東京大学大学院農学生命科学研究科・国際動物資源科学研究室

　哺乳類の性分化過程では、Sry, Sox9, M33などクロマチン構造の変換に関する転写因子群が重要である。しかし、クロマチンの構造の変化が性分化過程において関与しているという直接的な証拠はない。そこで我々はヒストンの脱アセチル化酵素の阻害剤トリコスタチンAを、生殖腺の器官培養系に添加し、クロマチン構造の変化が生殖腺の発生、性分化に及ぼす影響を調べた。その結果、0.1μMの投与では、精巣のサイズの減少が認められた。精巣索の形成自体は阻害されないが、1μM条件下では、1から2個の巨大な精巣索が形成された。Sox9やMISの発現から、セルトリ細胞の分化は正常に誘導されていたが、Dnmt3b陽性のセルトリ細胞は精巣索以外にも存在した。3β-hdsの遺伝子発現から、ライディッヒ細胞の分化も正常である事が示唆された。一方、生殖細胞数は有意に減少していた。また、卵巣分化においては、生殖腺サイズの減少は1μM投与で初めて認められた。卵巣サイズの減少が伴わないにも関わらず生殖細胞数の減少は減数分裂中の細胞も含め認められた。以上より、トリコスタチンAは生殖細胞の成長、増殖、分化に関与し、生殖腺の性分化それ自体には影響を与えないことが示唆された。

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中国ミニチュアブタからの効果的な胚性幹細胞の単離および培養（J. Reprod. Dev. 50: 237-244, 2004）

Ming LI1,2)・Wei MA1)・Yi HOU1)・Xiao-Fang SUN3)・Qing-Yuan SUN1)・Wei-Hua WANG1)

1)State Key Laboratory of Reproductive Biology, Institute of Zoology, Chinese Academy of Sciences, Beijing 100080, China
2)School of Life Science, Yunnan University, Yunnan 650091, China
3)Institute of Obstetrics and Gynecology, Guangzhou Second People�s Hospital, Guangzhou, China

　ブタは他の動物よりもヒトにとってより良いモデル動物である。実験用ミニチュアブタは新しい実験動物であり、多くの医療技術分野に応用できると期待されている。この研究は、中国ミニチュアブタのES細胞を単離し培養するための、効果的な技術を開発することを目的に行った。胚盤胞期胚から内部細胞塊（ICM）を単離する方法として、常法の免疫手術法および酵素・消化法を比較した。単離されたICMは、3種類のフィーダー細胞、すなわち、マウス胚性繊維芽細胞（MEF）、ブタ胚性繊維芽細胞（REF）及びマウス胚性繊維芽細胞の株化細胞（STO）上で培養した。さらに、これら3種類のフィーダー細胞の微小管の活性を免疫蛍光によって調べた。酵素・消化法を用いると、85%の胚盤胞期胚からICMが単離出来たが、免疫手術法では40%からしか単離出来なかった。ICMを3種類のフィーダー上で2～3日間培養した時、MEF、PEFおよびSTOにおいて、それぞれ、75%, 65%, および20%のICMがプライマリーな細胞コロニーを形成した。それらのコロニーは、MEF、PEFおよびSTOにおいて、それぞれ、9、5および1継代培養後にも形成された。STOの微小管の数は、MEFおよびPEFのそれよりも有意に少なかった。ES様細胞を分化誘導培養液中で培養すると、ES様細胞はニューロン様や他のタイプの細胞に分化した。これらの結果から、より正常なICMが酵素・消化法によって得られること、MEFだけではなく、ブタのフィーダーレイアーを用いてもICMからES様細胞を得られること、および、本研究で得られたES様細胞は多能性を有することが明らかになった。

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ピレスロイド系殺虫剤にエストロゲン様活性があることをin vitro評価系を組み合わせて判定した（J. Reprod. Dev. 50: 245-255, 2004）

In-Young KIM1,2)・Jae-Ho SHIN1)・Hyung-Sik KIM1,3)・Su-Jung LEE1)・Il Hyun KANG1)・Tae-Sung KIM1)・Hyun-Ju MOON1)・Kwang-Sik CHOI1)・Aree MOON2)・Soon-Young HAN1)

1)Endocrine Toxicology Division, National Institute of Toxicological Research, Korea Food and Drug Administration, Korea
2)College of Pharmacy, Duksung Women's University, Korea
3)Division of Molecular Toxicology, College of Pharmacy, Pusan National University, Korea

　ピレスロイド系殺虫剤の内分泌攪乱作用の有無は不明なので、エストロゲン様活性の有無をin vitro評価系を組み合わせて判定できるか否か調べた。即ち7剤（bioallethrine、cypermethrin、deltamethrin、fenvalerate、permethrin、sumithrin、tetramethrin）と17β-estradiol（E2：陽性対照）がヒト乳ガン細胞（MCF-7 BUS細胞）の増殖およびエストロゲン受容体タンパク（ER）とpS2 mRNAの発現におよぼす影響を調べた。E2は細胞増殖を亢進するが、sumithrinのみが同様の作用を示した。Bioallethrin、fenvalerateおよびpermethrinは、エストロゲン拮抗剤（ICI 182,780）と同様に、このようなE2の細胞増殖作用を抑制した（抗エストロゲン作用）のだが、ラット子宮のERαを用いた拮抗試験ではエストロゲン拮抗作用は認められなかった。SumithrinはE2と同様に細胞内のERαとERβレベルを低下させ、pS2 mRNAレベルを高めたが、6剤にはこのような作用が認められなかった。直接ERと結合するのではないが、一部のピレスロイド系殺虫剤にはエストロゲン様作用があることがわかった。これらは内分泌系を攪乱すると考えられる。

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ウシ黄体における黄体形成ホルモン（LH）のホスホリパーゼCを介したプロジェステロン分泌促進機構に関する研究（J. Reprod. Dev. 50: 257-261, 2004）

西村　亮1)・柴谷雅美1)・Dariusz J Skarzynski 2)・奥田　潔1)

1)岡山大学大学院自然科学研究科・生殖内分泌学教室
2)ポーランド科学院

　ウシにおいて、黄体形成ホルモン（LH）はアデニル酸シクラーゼ（AC）の活性化にともなって産生されるサイクリックAMP（cAMP）をセカンドメッセンジャーとして、黄体細胞のプロジェステロン（P4）合成を促進することが知られている。最近、LHがホスホリパーゼ（PL）Cを活性化することが示され、LHのPLCを介したP4合成調節機構の存在が示唆されている。本研究では、ウシ黄体細胞におよぼすPLCの影響について検討した。さらに、LH刺激下におけるP4およびcAMP産生におよぼすPLCの活性阻害剤（U-73122）の影響についても併せて検討した。その結果、PLCは濃度依存的にP4分泌を促進した（P＜0.05）。また、U-73122は単独では黄体細胞のP4分泌に影響を及ぼさなかったが、LH刺激下においてはLHのP4刺激作用を有意に抑制した（P＜0.01）。しかし、U-73122はLH刺激下のcAMP合成には影響を及ぼさなかった。以上のことから、LHはAC-cAMP以外にPLCを介したシグナル伝達経路によって黄体細胞のP4分泌を促進することが明らかとなった。

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マウスES細胞由来核移植卵の発生能に及ぼす核移植方法の影響（J. Reprod. Dev. 50: 263-268, 2004）

薮内晶子1)・安田佳子2)・加藤容子1)・角田幸雄1)

1)近畿大学農学部
2)近畿大学医学部

　本実験では、ES細胞由来核移植卵の発生能を向上させることを目的として、ES細胞核移植に関わる諸条件を検討した。すなわち、ドナー細胞の細胞周期、ドナー細胞のレシピエント卵子への導入方法、核移植卵の活性化刺激方法である。その結果、核移植卵の胚盤胞への発生能は、(1) ES細胞の細胞周期をM期に同調すること、(2) ES細胞を不活化センダイウイルスで細胞融合すること、(3)ストロンチウムの単独処理で活性化処理を与えることで、向上することが明らかとなった。しかしながら、いずれの区においても産子への発生率を向上させるには至らず、今後より詳細な検討が必要であることが示唆された。

［英文要旨＆PDF］

Volume 50, Number 2(2004)