JRD Vol. 48, No. 2 (2002)

近交系Hatanoラットに認められた春機発動時期および血漿中ホルモン濃度の系統差（J. Reprod. Dev. 48: 111-119, 2002）

佐藤昌子1)・太田　亮1)・小島幸一1)・代田眞理子1)・鯉渕　啓2)・浅井さやか2)・渡辺　元2)・田谷一善2)

1)（財）食品薬品安全センター秦野研究所
2)東京農工大学農学部獣医学科家畜生理学研究室

　Hatanoラットは、シャトルボックス条件回避学習試験の結果により分離された2系統の近交系からなり、ストレスに対する反応および副腎機能に系統差が認められている。本研究では、これらの2系統の包皮分離日齢、性成熟期の精子数および血中ホルモン濃度を調べ、春機発動時期に関する比較を行った。高回避ラットの体重は、低回避ラットより継続して重かったが、精巣重量は、春機発動期に低回避ラットの方が高回避ラットより重くなった。包皮分離は、高回避ラットの方が低回避ラットより約7日早く認められた。精巣および精巣上体精子数は、春機発動期には高回避ラットの方が有意に多かったが、成熟後は系統差が認められなかった。離乳後の血漿中性腺刺激ホルモン濃度は、高回避ラットで急激な増加が認められ、その後低回避ラットより高値のまま推移した。高回避ラットの血漿中テストステロン濃度は、低回避ラットより若い日齢で増加が認められた。これらの結果から、Hatanoラット雄動物では高回避ラットの方が低回避ラットより早く春機発動が認められ，この系統差は性成熟期に認められた性腺刺激ホルモン濃度の系統差に起因すると推察された。

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卵丘細胞核の体外成熟卵への注入によって作られたブタ核移植胚の体外発生能（J. Reprod. Dev. 48: 121-129, 2002）

長嶋比呂志1)・栗原　隆2)・若生直浩1)・落合　崇1)・黒目麻由子1)・水野賢一1)・高萩陽一3)・藤村達也3)・村上　博3)

1)明治大学農学部・生命科学科生殖工学研究室
2)大阪大学大学院・医学系研究科臓器制御医学専攻
3)（株）日本動物工学研究所

　レシピエント卵として体外成熟卵、核ドナー細胞として卵丘細胞を用いてブタの核移植胚を作出し、移植核のリモデリングならびに核移植胚の体外発生能について調べた。レシピエント卵の体外成熟法として、NCSU23液を用いる方法（NCSU23-based method）とTCM199液を用いる方法（TCM199-based method）の2種を比較した。いずれの卵成熟法を用いた場合にも、卵細胞質内注入によって、卵の活性化が誘起されることはなかった（NCSU23-based: 61/61、100%; TCM199-based: 49/50、98%）。再構築胚を核移植後1時間に固定・染色した結果、大半のものにおいて移植核の凝縮が認められた（NCSU23-based：22/29、76%； TCM199-based： 19/23、83%）。核移植後の時間経過に伴い（2～5時間）、分散した染色体を持つ卵の割合が増加した。核注入後2～2.5時間あるいは 3.5～4時間に、再構築胚に電気的活性化刺激を与えた結果、両区において約70%の率で前核様核（1～4個）の形成が認められた。再構築胚の培養において、レシピエント卵の体外成熟系の種類にかかわらず、5（5/98）～11（12/111）%の率で胚盤胞への発達が認められた。以上の結果から、体外成熟卵への卵丘細胞核の注入によって、高率に核のリモデリングが起こり、また、再構築胚が胚盤胞への発生能を有することが示された。

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組換え体ブタFSHより作成した抗血清の検討（J. Reprod. Dev. 48: 131-136, 2002）

冨澤恭子1)・小川智史1)・加藤たか子1,2)・渡辺美由紀3)・佐藤一郎4)・伊原　武4)・坂井貴文3)・服部真彰5)・井上金治3)・上田　進4)・菊池元宏6)・森　純一6)・加藤幸雄1,2)

1)群馬大学生体調節研究所・生理活性物質センター
2)明治大学農学部生命科学科・遺伝情報制御学研究室
3)埼玉大学理学部生体制御学科・細胞制御学研究室
4)日本生物科学研究所
5)九州大学大学院農学研究院・動物資源科学部門・家畜繁殖生理学分野
6)北里大学獣医畜産学部獣医学科・獣医繁殖学研究室

　組換え体ブタFSH（rec-pFSH）の抗血清を作成し、この抗血清の性質について時間分解蛍光免疫測定法（TR-FIA）および免疫組織化学法による検討を行った。抗rec-pFSH抗血清はTR-FIA系では約5,000倍希釈で使用可能なものであった。この測定系ではrec-pFSHの抗原性および反応性はブタ下垂体より調製したFSHのそれらと同じであった。次に、数種の動物のFSHとの反応性をTR-FIAで調べてみると、ヒツジおよびラットのFSHは本抗血清との反応性が低く、種特異性が認められる抗血清であることが判明した。また、他の下垂体ホルモンとの交叉性も低く、各種動物の下垂体抽出物との反応もブタを除いて認められなかった。一方、本抗血清を用いて免疫組織化学を行ったところ、この抗血清はブタ下垂体前葉の特定の細胞に対して陽性の反応を示すことが確かめられた。同様の陽性反応は、ウシ、ヤギ、ウマの下垂体でも得られた。以上の結果から、LHの混入が全く考えられないrec-pFSHから作成した抗rec-pFSH抗血清は、競合的免疫反応であるTR-FIAではその種特異性のために定量的測定での使用に制限があるものの、非競合的免疫反応である免疫組織化学のような研究に有用であると結論される。

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鳥類胚培養法による孵化の高率化へ向けた検討（J. Reprod. Dev. 48: 137-142, 2002）

川嶋貴治1)・石黒　進2)・相川梨絵3)・玉置禎紀3)・小川　博4)・橋本光一郎5)

1)神戸大学大学院自然科学研究科
2)横浜国立大学大学院教育学研究科
3)横浜国立大学教育人間科学部
4)東京農業大学富士畜産農場
5)明治乳業株式会社

　ニワトリ胚を用いて開発された胚培養法（ECS）を、最終的に希少鳥類種に適用することを目指して、ECSにおける幾つかの基礎的な特性を調べた。システムIIで72時間培養されたニワトリ胚（ステージ12-20；最頻出ステージ17-18）は、対照胚（ステージ15-21；最頻出ステージ19）よりも発生遅延を示すと同時に、幅広い発生ステージの分布を示した。システムIIからシステムIIIへ胚を移し替える際の胚の発生ステージは、その後の生存率と孵化率に影響を及ぼし、ステージ18の時期に移し替えた場合に最も良い発生率が得られた。希少鳥類種への適用に向けて、本研究で得られた結果の意義について考察した。

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胚性線維芽細胞培養上清によるニワトリ始原生殖細胞の生存性と増殖性の向上（J. Reprod. Dev. 48: 143-150, 2002）

川嶋貴治1)・加野浩一郎2,#)・河南保幸2)・玉置禎紀3)・橋本光一郎4)

1)神戸大学大学院自然科学研究科
2)神戸大学農学部
3)横浜国立大学教育人間科学部
4)明治乳業株式会社
#現所属：日本大学生物資源科学部

　ニワトリ2.5日胚から単離した血管系循環期の始原生殖細胞（cPGCs）を、ウシ胎児血清添加のpH 8.0に調整した胚性幹細胞用培地（ESM）を用いて5日間浮遊状態で培養した。ほとんどの細胞が培養5日以内に死滅した。その間にわずかの細胞（16-23%）が1回細胞分裂を行ない、さらにわずかの細胞（3%以下）が2回の細胞分裂を行った。胚性線維芽細胞由来の培養上清（CM）を使用すると、cPGCsの生存性及び増殖性は著しく向上した。3分の1の細胞が5日間生存し、一部の細胞（3-5%）は、3回分裂した。培養されたcPGCsは、生殖領域へ移動する能力を保持しており、CM中で5日間培養されたニワトリcPGCsを、ウズラ2日胚の血流中に移植すると生殖系列キメラとなった。

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ドジョウ（Misgurnus anguillicaudatus）のゲノムにおける異なったフォームのトランスジーンの導入効率の評価（J. Reprod. Dev. 48: 151-156, 2002）

Nguyen Van CUONG・Nguyen Thi Dieu THUY・Quyen Dinh THI・Dau Hung ANH・Tnam Thi Thu NGA

Institute of Biotechnology, National Center for Natural Science & Technology, Vietnam

　ドジョウ（Misgurnus anguillicaudatus）のゲノムにおける異なったフォームのトランスジーンの導入効率を検討するため、メタロチオネインプロモーターをもつヒト成長ホルモン遺伝子（pMThGH）を含むプラズミド（環状、一本鎖、リポソーム）をドジョウの受精卵に導入した。導入に際し、制限酵素（EcoR1, BamH1, BglII）処理やPCRにより、成長ホルモン遺伝子の存在を確認した。一本鎖pMThGHは環状プラズミドをBamH1で処理することにより得た。リポソームにトラップされたプラズミドは dioleyl phosphatidyl choline、cholesterol 及びpMThGH存在下で調整した。受精卵から発生したドジョウのゲノムDNAにおける顕微注入された hGH遺伝子の存在はhGHに特異的な2つのプライマーによるPCRにより行った。PCR陽性においては479bpに位置する一本のバンドとして同定された。ネガティブ及び対照区ではそのようなバンドは観察されなかった。hGH遺伝子のドジョウ染色体への導入効率は環状、一本鎖、リポソームでそれぞれ6%、12%及び11%であった。遺伝子導入ドジョウの6カ月後の平均体重は環状、一本鎖、リポソームでそれぞれコントロール区と比較して1.63、1.73及び1.68倍であった。このような結果は遺伝子導入後の体重には方法による違いはないものの、ドジョウ染色体に遺伝子導入するためには環状よりも一本鎖あるいはリポソームを用いる方法がより効果的であることを示している。

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ブタ単為発生ホモ2倍体の体外発生（J. Reprod. Dev. 48: 157-166, 2002）

Nguyen Van THUAN・原山　洋・三宅正史

神戸大学大学院自然科学研究科・生命科学専攻・応用生物

　単為発生体の倍数性、ならびに2倍体におけるゲノム構成のホモ性が、胚盤胞への体外発生に及ぼす影響を明らかにすることを目的として本研究を行った。体外成熟卵母細胞に、1,500 V/cm、100 μsecの直流パルスを1回与えて活性化を誘起した。はじめに、電気刺激後、6、16、18、20ならびに22時間活性化卵母細胞を培養し、単為発生1倍体の第1分裂時期を明らかした。ついで、ホモ2倍体を作成するために、第1分裂を効率的に抑制できるサイトカラシンB （CB）の処理開始時期と処理時間について検討した。そして、CB処理を行わずに得られた単為発生1倍体、電気刺激20時間後から6時間のCB処理によって得られたホモ2倍体、ならびに電気刺激直後から4時間CB処理を行って得られたヘテロ2倍体の、胚盤胞への体外発生能力を比較した。多くの1倍体は、電気刺激後16～22時間の間に第1分裂の前期から終期に達していた。電気刺激後20時間から6時間の5.0 μg/ml CB処理によって、1倍体の第1分裂は効率的に抑制され、大部分（84%）がホモ2倍体になっていた。単為発生体の胚盤胞への発生率は、1倍体（5%）において、ホモ（48%、P<0.01）ならびにヘテロ2倍体（57%、P<0.01）より有意に低かった。この結果は、活性化卵母細胞のゲノム構成のホモ性ではなく、倍数性が単為発生体の胚盤胞への発生に影響することを示している。

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ブタ卵巣の閉鎖卵胞顆粒層細胞ではTRAIL囮受容体-1が消失する（J. Reprod. Dev. 48: 167-173, 2002）

和田聡子・眞鍋　昇・井上直子・中山瑞穂・松井利勝・宮本　元

京都大学農学研究科応用生物科学専攻生体機構学

　卵胞閉鎖時の顆粒層細胞アポトーシスの分子制御機構を解明すべく、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド（TRAIL）とその受容体の局在を免疫組織化学的に調べた。閉鎖卵胞顆粒層細胞ではTRAIL囮受容体-1 が消失した。しかし、TRAIL、TRAIL受容体-4 および-5 には著明な変化が認められなかった。TRAIL囮受容体-2 は検出されなかった。ブタ卵巣の卵胞閉鎖過程で認められる顆粒層細胞アポトーシスの制御にはTRAILとその受容体が深く関与しており、TRAIL囮受容体-1 はアポトーシス阻害因子として働いていると考えられる。

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ブタ卵巣の卵胞閉鎖における顆粒層細胞アポトーシス誘導にTRADDが必要である（J. Reprod. Dev. 48: 175-181, 2002）

和田聡子・眞鍋　昇・井上直子・中山瑞穂・松井利勝・宮本　元

京都大学農学研究科応用生物科学専攻生体機構学

　ブタ卵胞の顆粒層細胞には腫瘍壊死因子（TNF）関連アポトーシス誘導リガンド（TRAIL）とその受容体が発現していることを組織化学的に示したが、TRAILは細胞死と細胞増殖の両シグナルを伝達する。TRAIL受容体-4 および-5と結合して細胞死シグナルを細胞内に伝達するTNF受容体結合性細胞死ドメインタンパク（TRADD）の mRNAの発現をRT-PCR法とin situ hybridization法にて調べた。TRADD mRNAは閉鎖卵胞の顆粒層細胞にのみ検出された。卵胞閉鎖過程における顆粒層細胞アポトーシス誘導にTRADDが必要であり、TRAILとその受容体系は顆粒層細胞にアポトーシスを誘導していると考えられる。

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視床下部弓状核はグルタミン酸によるGnRH放出を促進するエストロジェンの効果を仲介する（J. Reprod. Dev. 48: 183-188, 2002）

村橋久美子・塚原伸治・束村博子

名古屋大学大学院生命農学研究科

　興奮性アミノ酸の一つであるグルタミン酸（Glu）は、性腺刺激ホルモン放出ホルモン（GnRH）や黄体形成ホルモン（LH）分泌に対して促進効果をもち、これがGnRHおよびLHサージの誘起に重要な働きをすることが示唆されている。本実験では、エストロジェンがGluによるGnRH放出に促進的な効果を持つことに注目し、このエストロジェンの効果の発現における視床下部弓状核（ARC）の重要性を確かめることを目的とした。卵巣除去を施したウィスターイマミチ系のラットに高濃度あるいは低濃度のestradiol-17β（E₂）を処理し、これらの動物から採取したARC-正中隆起（ME）あるいはMEのみを含む組織片をin vitro実験に用いた。Gluは用量依存的にARC-MEおよびMEからのGnRH放出を促進した。高濃度および低濃度のE₂処理は、ARC-MEからのGluによるGnRH放出量を有意に増加させたが、MEからの放出には何ら効果を持たなかった。またE₂処理は、NMDA、AMPAおよびカイニン酸型のGlu受容体サブタイプ作動薬によるARC-MEからのGnRH放出を有意に促進した。以上の結果より、Gluにより誘起されるGnRH分泌に対するエストロジェンの促進効果はARCによって仲介されること、またその効果はNMDA型および非NMDA型受容体を介して発現する事が示唆された。このARCの働きは発情前期におけるLHサージの誘起に何らかの役割を担うものと推察される。

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凍結保存およびガラス化保存されためん羊胚の生存性と直接移植による受胎性（J. Reprod. Dev. 48: 189-195, 2002）

岡田亜紀・吉井久美子・水落康友・安藤俊雄・丞々幸生・和知祥子・外川守彦・石田直久・浅田正嗣・福井　豊

帯広畜産大学・家畜育種増殖学講座

　近年、高価な機器を必要とせず短時間で行えるガラス化保存法が注目されてきている。また、ウシを中心に行われているダイレクト移植法は野外に適した移植法である。本研究では、緩慢凍結法（ethylene glycol (EG)-3 step法）、ダイレクト移植用凍結法（ダイレクト法）およびガラス化法で凍結保存しためん羊胚を融解後培養に供してその生存性を比較検討し（実験1）、ダイレクト法で凍結保存した胚をステップワイズ移植（s-ET）またはダイレクト移植（d-ET）に供して移植法の検討を行い、またガラス化保存胚によるs-ET試験を実施した（実験2）。生体内由来めん羊胚（桑実胚から胚盤胞期胚）を以下の3方法で凍結保存した。EG-3 step法：1.5 M EG溶液に平衡させ緩慢冷却した後液体窒素（LN₂）中に保存した。ダイレクト法：4% EGと4% propylene glycolを含む凍結溶液に平衡後、0.3 M sucrose溶液を両脇に配してストローに吸引した後緩慢凍結した。ガラス化法：3段階で25％ glycerol (GLY)と25% EGを含むガラス化溶液に移してから30秒以内にLN₂中に投入した。実験1．融解後の胚は全て耐凍剤を希釈�除去後mSOFaaciで培養した。生存率、孵化率（～144 h）、正常孵化率（～72 h）において各保存法間、各発育段階間に有意差は見られなかった。EG-3 step法の生存率は他の方法よりも高い傾向がみられたが生存胚に孵化遅延や変性が多く（28.6%；ダイレクト法：16.7%、ガラス化法：6.7%）、孵化率に有意差は見られなかった。実験2．ダイレクト法により凍結保存した胚を融解後に各方法で胚移植した。受胎率、分娩率は共に25%であったが、d-ET後の生存性はs-ETよりも良いように思われた（移植胚の生存率；18.8% vs. 10.0%、融解胚の利用効率；18.8% vs. 3.7%）。ガラス化胚の移植試験では形態的に正常な加温胚の69.0%（20/29）を移植に供した所、移植胚の生存性は高く、62.5%（5/8頭）の分娩率が得られた。以上のことより、めん羊にもダイレクト移植法の応用が可能であり、ガラス化法はその後の発育能に悪影響の少ない良好な保存法であることが示唆された。

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ニワトリ甲状腺刺激ホルモンβサブユニットに対する特異的ペプチド抗体の作成と性質の検討（J. Reprod. Dev. 48: 197-204, 2002）

岩澤　淳1)・中山博文1)・山本欣郎2)・土井　守1)・中村孝雄1,#)・加藤幸雄3)

1)岐阜大学農学部・動物生産学講座
2)岐阜大学農学部・家畜解剖学講座
3)明治大学農学部・生命科学科
#現所属：岐阜県農業大学校

　鳥類の生殖や代謝の研究を行う上で、甲状腺刺激ホルモン（TSH）に対する抗体が存在しないことがこれまで大きな支障となってきた。そこで本研究では、ニワトリTSHのβサブユニットに対する特異的なペプチド抗体を作成し、その性質を検討した。ニワトリTSHβサブユニットのcDNA配列に基づいて、アミノ酸配列35番から50番に相当するペプチド（Tb3550; Asp-Ser-Asn-Gly-Lys-Lys-Leu-Leu-Leu-Lys-Ser-Ala-Leu-Ser-Gln-Asn）を合成し、家兎に免疫してポリクローナル抗体を作成した。抗体の特異性を高めるため、このペプチド配列は鳥類のTSHβのみに存在し、既知の鳥類のタンパク質には存在しない配列を用いた。抗Tb3550 はニワトリ下垂体前葉の前部腺体のイムノブロットで18.2 kDaのバンドを認識したが、後部腺体にはバンドは認められなかった。免疫組織化学においても、ニワトリLH抗体に陽性の細胞が下垂体前葉の全体に散在していたのに対し、抗Tb3550 陽性細胞は前部腺体に限局していた。抗Tb3550 はニワトリLH および FSH の純品とも結合しなかった。以上のことから、この抗体はニワトリTSHβを特異的に認識すると考えられた。この抗体は不明な点の多い鳥類TSH機能の研究をはじめ、未だ精製の報告がない鳥類TSHの精製を行う際の活性測定のためにも有用と考えられる。

［英文要旨＆PDF］

Volume 48, Number 2 (2002)