書評


雌牛の繁殖障害カラーアトラス

獣医繁殖学教育協議会 編 

 

チクサン出版社
B5判 136頁 オールカラー
10,500円(税込み)
2005年9月発行
ISBN 4-88500-424-I


【JRD2005年12月号(vol.51, No.6)掲載】


 このたび全国獣医系大学の繁殖学担当教員で構成する獣医繁殖学教育協議会(代表者:帯広畜産大学 三宅陽一教授)によって企画された『雌牛の繁殖障害カラーアトラス』が出版されました。

 本書は従来の繁殖学教科書の体裁にこだわらず、豊富なカラー写真や超音波検査画像、内視鏡画像、顕微鏡写真などをふんだんに取り入れそれぞれ解説を加えて、わかりやすく説明されています。連続的にあるいは多面的に撮られた写真により読者は臨床フィールドにおける症例を目の当たりにすることができ、臨床家を目指す学生にとってはこの上ない教材となります。臨床フィールドの獣医師にとっても、日ごろ直腸検査や腟検査のみで、触感であるいは外面的にしか得られない情報の中で推測していた内部の状況を、こうした臓器の写真や超音波画像などを見ることで、より鮮明にその症例をイメージすることができます。一方で日本国内における研究を基にしたグラフや表を数多く提供し解説することで、読者が理解を深めることができると同時に、フィールドにおける繁殖学研究に役立つ専門書としても活用することができます。

 各種の繁殖障害は臨床症状・定義、病態・原因、診断、治療、類症鑑別、予後など体系的にまとめられており、臨床家にとっても日常診療の座右の書として利用でき、卒後教育や生涯教育のための教材としても利用価値が高いものであります。

 近年の獣医学の進歩は目覚しいものがあると思いますが、日本国内の獣医学書は限られており、新しい研究や知識を入手するためには、どうしても海外の書物に頼らなければならない現状がありますが、日常忙しい中、海外の文献を読むことは困難であることが実状です。そのような中、本書は国内で初めての牛の繁殖に関するカラーアトラス集であり、海外の書物に情報源を頼っている大動物研究者や臨床家にとって、格好の繁殖学専門書となることでしょう。また、臨床フィールドの経験が少ない獣医学系の学生にとっても、この本と接することを機に、大動物臨床への志の一助となることを願っています。

 近年の牛における改良スピードは目覚しいものがありますが、同様に疾病や障害も多岐にわたり、大動物臨床獣医師が求められる技術レベルは、より広く深く要求されています。本書の出版を機会に各分野における新しい技術書の出版や再編が進むことを期待しています。

(帯広畜産大学大動物特殊疾病センター助教授 石井三都夫)

主要目次
第1章 繁殖機能のホルモン支配  
第2章 発情および発情徴候
第3章 正常な卵巣
第4章 卵巣疾患
第5章 黄体機能とその異常
第6章 卵巣腫瘍
第7章 卵管疾患
第8章 正常な子宮
第9章 子宮疾患
第10章 腟疾患
第11章 妊娠診断
第12章 妊娠期の異常
第13章 流産
第14章 周産期の異常
第15章 繁殖障害の先天異常
添付資料1 雄牛の繁殖障害
添付資料2 雌牛繁殖障害の診療指針一覧
添付資料3 牛の感染性流産一覧

 


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