施設紹介
株式会社オリエンタルバイオサービス 大竹 聰 |
【JRD2005年10月号(vol.51, No.5)掲載】
はじめに
株式会社オリエンタルバイオサービスは、オリエンタル酵母工業株式会社と北山ラベス株式会社の出資により実験動物関連のバイオ製品の専門販売会社として、1988年4月1日に設立されました。その後、事業展開を進め、南山城研究所の設立を経て、2004年からは神戸BMラボラトリーを設置しました。現在、この2つの拠点を事業の中核にして、実験動物関連製品の販売のみならず、遺伝子改変動物の作製や受託飼育などの事業を大きく展開し、生命科学の基盤研究の貢献に努めています。当社は「永年業務で蓄積した基本技術の確実な遂行」を特徴とする人材育成にも取り組み、遺伝子改変動物関連の研究をサポートし続ける企業を目指しています。
各事業所の紹介
●南山城研究所 京都府相楽郡南山城村に設立し、JR奈良駅より車で40分、JR加茂駅より30分の距離に位置しております。緑豊かな山々に囲まれ、カヌーで有名な木津川や笠置オートキャンプ場に程近い、自然に包まれた環境で業務を進めています。
この事業所では、主にマウス・ラットを対象とした遺伝子改変動物の飼育棟としてコンベンショナル施設(1棟)とSPFバリア施設(3棟)を有し、ユーザーの方から貴重な研究生物資源をお預かりしております。まず、コンベンショナル施設はSPF化や胚の凍結保存を目的に国内外から搬入された各種実験動物を一時的に飼育する施設であります。一方、SPFバリア施設は、再現性の高い実験結果を得るため実験動物の微生物制御等を行っております。この施設内には、HEPAフィルターで浄化した空気を各部屋に送りマウス・ラットを維持管理するSPF動物飼育室、液体窒素下で受精卵を保存する凍結胚保管室、生殖工学技術で受精卵を無菌的に回収してCO2インキュベーターで保持する培養室、マイクロマニュピレーターによる遺伝子の顕微注入など発生工学技術を行う顕微操作システム、そして検疫のために完全隔離飼育を行うビニールアイソレーターなどが設置されております。
●神戸バイオメディカルラボラトリー(神戸BMラボラトリー) ポートライナー「三宮駅」から乗車10分で「市民広場駅」下車、ムービングウォークにて徒歩約8分、ポートアイランド内神戸バイオメディカル創造センター研究棟1Fに位置し、2004年8月より業務を開始しております。
神戸BMラボラトリーの最大の特徴は、マイクロアイソレーションラックを導入した新しい受託施設となっていることです。非SPFや輸入マウス・ラットなどを使った緊急を要する実験を希望する研究者や、その他アデノウィルスベクター・菌感作試験を行う研究者の方が利用できる施設となっております。また、神戸BMラボラトリーは、南山城研究所が有機的な機能融合を行っており、生命科学研究者に対してフレキシブルなサービス提供をする体制を整えております。
培養室 神戸BMラボラトリー
マイクロアイソレーションラック 検疫用ビニールアイソレーター 業務内容について
近年、受託飼育管理業務に加え、生命科学研究における遺伝子改変マウスの重要性が高まってきており、我々の活躍できるフィールドも広がっております。当社でラットの動物生産を行ってきた経験を含め永年蓄積された動物の繁殖管理に対する実績・ノウハウが現在の事業の中核を担っている遺伝子改変マウス飼育管理に役立っております。さらに、最先端のマウスの生殖工学技術を導入して、Tgマウスの作製・胚の超低温保存・SPF化・体外受精による個体作出も業務として展開しています。例えば、SPF化事業に関しては、業務開始からすでに500系統以上の実績を持ち、現在ではスタンダードになりつつあります胚移植技術を用いた微生物学的なクリーニング方法(図解・実験動物技術集II参照)を早期に採用したことにより、従来の子宮切断術を用いた手法と比較して効率的にかつ確実にSPF化作業を行っております。また、SPF化したマウスや作製した遺伝子改変マウスをSPFバリアで受託飼育する繁殖・供給の事業も進めており、多数の実績を積み重ねております。
最近では、新設の神戸BMラボラトリーと連係しながら、左図のようなビジネスモデルも構築を進め、南山城研究所で作製・繁殖した遺伝子改変動物を神戸BMラボラトリーへ供試動物を供給して、併設の実験室にて依頼した研究者の方が動物試験を直接行うことも可能となっております。
今後は、技術革新の激しいマウス生殖工学分野の新規技術を導入することと同時に、生理学の解析に有用であるラットにおいても新しい需要に対応すべく生殖工学技術の確立を行い、実験動物における信頼性の高い新規技術の提供ができるよう取り組んでいこうと思っております。
オリエンタル酵母工業(OYC)グループとしての展開
当社は、冒頭でもご紹介したようにオリエンタル酵母工業(株)の関連会社として発足しております。オリエンタルグループではGene/Cell/Animalをキーワードとして、ライフサイエンス研究に役立つ幅広い研究支援サービスを行なっております。当社の遺伝子改変動物の受託業務を行なう上では、オリエンタル酵母の実験動物用飼料・床敷・飼育器材、長浜生物科学研究所ではコンストラクト作製・プラスミドの断片調整・遺伝子解析、北山ラベス株式会社では組換えタンパク・抗体の生産・微生物検査、日本バイオリサーチでは、遺伝子改変動物の行動解析などで業務の協力体制をとっております。これらの部署が相互間協力することにより、生命科学研究に大きく貢献する企業としての総合力アップを図っております。
最後に
設立時には12名の事業所でしたが、その後遺伝子改変動物の受託サービスを展開し現在では、男女ほぼ同数の計50名までメンバーが増えてまいりました。特に20代から30代の若い世代が多く、やる気と活気に満ちております。これら従業員全員が社名にも使われている“サービス”とは本来どういうことなのかを常に考え、新しい試みに夢を膨らませ、忙しさの中に初心を忘れず事業の拡大を図りたいと思っております。遺伝子改変動物研究支援サービスや実験動物管理など、オリエンタルバイオサービスがこれまで培ってきた技術や施設を生命科学分野の研究・開発にお役立て頂ければ幸いです。
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