日本繁殖生物学会国際交流費による
2005年度韓国動物繁殖生物学会年次大会視察に関する報告書

日本繁殖生物学会・渉外理事 永井 卓
2006年日本繁殖生物学会大会長 前多敬一郎
2006年日本繁殖生物学会大会事務局長 束村博子


【JRD2005年8月号(vol.51, No.4)掲載】


左から、束村−前多−Song Ho Lee韓国動物繁殖学会会長
 日本繁殖生物学会が取り組んでおります国際交流促進の一環として、永井卓渉外担当理事が中心になって、日韓の動物繁殖学関係学会の交流を進めようとしております。このたび、韓国大学において開催されました韓国動物繁殖学会年次大会において、永井ならびに2006年日本繁殖生物学会大会長および事務局長の前多敬一郎および束村博子が、韓国動物繁殖学会理事会メンバー等と意見交換を行ってまいりましたので下記のように報告いたします。またその際、韓国動物繁殖学会の現況・歴史などの詳細につきましても調査してまいりましたので合わせて報告いたします。

1.2005年度韓国動物繁殖生物学会年次大会参加の目的

韓国繁殖学会年次大会の実際を視察し、学会の現状や歴史について調査するとともに、韓国動物繁殖学会理事会において両学会の将来の交流形態に関する意見聴取を行うこと。

2.派遣スケジュールおよび経費

(1)派遣期間:平成17年6月17日(金)〜19日(日) (2)派遣先:韓国(ソウル)、韓国大学 (3)派遣経費:航空運賃;165,320円

3.韓国動物繁殖生物学会年次大会派遣報告

1)韓国動物繁殖学会の現況と歴史について(別紙1 [KSAR-1.pdf] および2 [KSAR-2.pdf]) 韓国動物繁殖学会は1975年に設立され、現在、369名の一般会員、142名の学生会員、75のAgency members、4つのLibrary members (合計:634)を有しています。最近では、韓国受精卵移植学会および韓国発生生物学会とのジョイント学会として、Joint Developmental Biotechnology Meetingが開催されるようになり、国際的な観点から外国人の講演者を招へいしています。これまでに多数の日本人研究者も招へい講演を行っていると聞きました。また、韓国動物繁殖学会、韓国受精卵移植学会および韓国発生生物学会が、一緒になってReproductive & Developmental Biology (RDB)という雑誌を発行しています。現在、同学会は6月および9月に年2回の大会を開催しています。

2005年上半期の韓国大学大会の発表数は、ポスター発表が106件で、うち英語の抄録が67件でした。Student competitionでは15件の発表があり、若手の育成にも力を入れています。また10件の教育講演等が盛り込まれていました。勿論、発表はすべて韓国語でしたが、殆どの発表スライドは英語で記載されていました。

学会懇親会

大会全体を俯瞰し感じたことは、同学会がたいへん活発な活動を展開しているということです。会員数などを比較すると日本繁殖生物学会よりも小規模であるように感じますが、若手研究者による発表も参加も多く、たいへん活気を感じました。理事会、評議員会、総会といった組織としての意志決定メカニズムは日本側とは異なりますが、理事会における議論も活発で、学会としてはたいへん整備されているという印象でした。発表されている研究領域には多少の偏りがありますが、将来の日韓両学会の交流の中で、他の分野の韓国人研究者をリクルートしていくことができれば、この問題も解決できると考えられます。

今回の韓国動物繁殖学会は、幸運にもちょうど30周年記念大会であることから、講演要旨に学会の歴史などが記載されており、その内容の一部をPresidentのSang Ho Lee韓国大学教授が英語に翻訳して下さいました(別紙1 [KSAR-1.pdf])。また、大会のプログラムを東北大学の大学院生である朴永男氏に翻訳していただきました(別紙2 [KSAR-2.pdf])。

2)韓国動物繁殖学会理事会との意見交換について

2004年に、日本繁殖生物学会佐藤理事長が前述のJoint Developmental Biotechnology Meetingに招へいされた時に、翌年に第一回ジョイントミーティングを広島で開催することを、前韓国動物繁殖学会長と約束し、2005年にそれが実現しました。しかしながら、日本繁殖生物学会が広島大会に招へいした3名の研究者を除き、ほとんどの韓国側研究者は、KOSEF(韓国における日本学術振興会相当の機関)の「平成16年度日本学術振興会日韓科学協力事業共同研究・セミナー」制度によって招へいされました。したがって、学会間での正式行事という認識が薄く、残念ながら、韓国動物繁殖学会の歴史には記載されておりませんでした。この点につきましては、反省する点が多くありますが、韓国繁殖学研究者とはこれまでは個人的に密接な関係を中心に発展してきたことを考え、このような「点と点の関係」を学会全体に広げ、「面と面の関係」として学会同士の「組織的な」交流を始める必要性を痛感いたしました。

韓国動物繁殖学会理事会での発表(前多)

このような観点に立って、今回の訪問では、永井・前多・束村が韓国動物繁殖学会の理事会に出席し、第2回日本繁殖生物学会・韓国動物繁殖学会ジョイント・シンポジウムについて、前多がその意図を以下のように説明いたしました。まず第一に日本繁殖生物学会の国際交流促進の目的の一つが、アジアの繁殖生物学のレベルアップにあること、その目的を達成するためには、“研究レベルが高く、多くの人的資源を擁し、地理的、文化的にも日本と非常に近い”韓国との協調がアジアにおける繁殖生物学者の結びつきを深める上での核であり、もっとも確実な一歩であること、そのために合同シンポジウムを開催し、将来の年次大会共催へと結びつけていこうということです。その前日の学会の懇親会では、日本を代表して永井が挨拶する機会を与えられました。このときには時間が足りず、あらためて翌日理事会における前多の説明になりました。

2日間にわたる大会の終了後、韓国動物繁殖学会理事会の昼食会に招待され、2006年以降の日本繁殖生物学会と韓国動物繁殖学会の交流についてさらに率直に話し合う機会を得ました。その場での主たる理事会メンバーの考えは、おおよそ以下のようでした。すなわち、(1)これから数年は2〜3年の間隔を置いて、日本・韓国交互にジョイント・シンポジウム等を主催すること、(2)双方の会員の中に、広い交流が生まれた時点で合同年次大会を開催すること、(3)そのために、両学会の理事会の間に協定書を作成し、両学会の総会で承認を得ること、などです。

あくまで最終ゴールは合同年次大会開催におきますが、段階的な合意が必要であるとの意見が主流でした。また、各学会の固有の事情もあり、今後、合同年次大会開催の詳細につきましては話し合いを積み重ねて行かなければならないと感じました

最後に、韓国滞在中の経費の一部はNam-Hyung Kim博士(Chungbuk National University)のご厚意により、同博士のプロジェクト研究費によって支出されたことを付記し、感謝の意を表したいと思います。同博士は、昨年、広島大会において開催した、The First Joint Symposium of the JSAR and KSAR の韓国側の責任者であり、「平成16年度日本学術振興会日韓科学協力事業共同研究・セミナー」プロジェクトを永井と共同で行った人物であります。

平成17年7月24日


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