書評

新・めん羊の繁殖技術

福井 豊著

2004年4月1日
A5版 128頁
1,575円(税込み)
発行所 東京農業大学出版会
東京都世田谷区桜丘1-1-1
電話 03-5477-2562 Fax 03-5477-2643


【JRD2004年10月号(vol.50, No.5)掲載】


 今から16年前の昭和63年(1988)に、「めん羊の繁殖技術」が出版され、わが国で唯一のめん羊に関する繁殖の手引書・専門書として好評を博し、活用されてきた。今回は、この15年間に急速に進展した体細胞クローン羊の“ドリー号”の誕生や遺伝子移植による形質転換羊の“ポリー号”など、羊における新しいバイオテクノロジーに関することなどを背景に、新しい知識と技術を含めての改訂が行われた。著者はわが国でのめん羊に関する研究の第一人者であり、羊の本場であるニュージーランドやオーストラリアに留学をして博士号を取得している。

 めん羊は、世界的に見ても11億頭が飼育され、3,000品種にも及ぶ非常に多様性を有する家畜の代表で、その利用価値は計り知れない。めん羊は既に文明の発祥と同時に家畜化されて、人間と共に生活をし、肉はラム・マトン、毛はセーター・帽子・手袋、乳はヨーグルト・チーズ、皮はオーバー・コートなど多くの生産物を人間社会に与えて、われわれの生活や文化と密接な繋がりを持ってきた。国土の少ないわが国では、牛よりも小型なめん羊は、飼育するのに非常に適している家畜とも言えるし、今後は郷土料理の「ジンギスカン鍋」のみならず、もっと有用に活用されることを期待したい。特に、生産性を向上させるためには、繁殖技術が一番大切であり、本書では、繁殖生理、交配と発情、人工授精、妊娠と分娩、そして新しい胚移植の応用など、めん羊の生産性・繁殖に必要な項目が網羅されており、それらの項目が解り易く解説されている。

 本書が、わが国でのめん羊関係者、特に、生産者、普及員、研究者および畜産・獣医学専攻の学生諸君に有効に活用されることを期待したい。更に、わが国のめん羊の増産に寄与し、わが国の食料自給率をいくらかでも高めると同時に、農村や地域の活性化および観光資源などとしても役立つことを期待する。

(北海道大学名誉教授・(社)北海道獣医師会 会長 金川弘司)


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