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施設紹介
ヒューマンサイエンス研究資源バンク 竹島 勉(動物胚バンク室長) |
【JRD2002年10月号(Vol. 48, No. 5)掲載】
■施設の概要
動物胚バンク(HSRRB) |
動物胚バンクは2000年11月に設立され、関西国際空港から車で20分、南海電車で難波駅から樽井駅まで1時間、駅から徒歩8分、大阪湾に面したりんくうタウンにあります。施設2階からは関西国際空港が見え、近くには樽井漁港、サザンビーチ海水浴場があり、河口干潟にはサギ科の野鳥や陸ではヒメボタルが時季おりおり観察できます。ヒューマンサイエンス研究資源バンクは動物胚バンクの他に細胞バンク、遺伝子バンク、ヒト組織バンクの4バンクと資源の情報を管理するデータベース部門があります。細胞と遺伝子バンクは財団法人ヒューマンサイエンス振興財団が1995年に開設し、国立医薬品食品衛生研究所、国立感染症研究所で収集・標準化し、品質管理を行った細胞、遺伝子等を国内および海外の研究者に分譲する業務を行っています。研究者に提供可能な培養細胞は686種類、遺伝子は9,742クローン保存されています。動物胚とヒト組織バンクは新規事業として位置づけられています。
敷地面積1973.00 m2 、延べ床面積1387.14 m2、地上二階建ての一階に資源保管室と動物飼育室、二階に情報室、会議室と事務を含め職員のデスクが置かれ、他に研究室が5部屋あります。一階の資源保管室には大型の液体窒素保管器10機、-80℃ディープフリーザー10機、プログラミングフリーザー3機が設置されており液体窒素は室外のタンクから常時自動的に補給されています。動物飼育室はクリーンエリアとセミクリーンエリアに分かれており、クリーンエリアには飼育室6部屋と実験室1部屋、セミクリーンエリアには飼育室2部屋、実験室1部屋と洗浄室が隣接しています。セミクリーンエリアでの動物飼育はHEPAフィルターで浄化した空気を各ケージに直接供給するマイクロアイソレーターラックシステムとビニールアイソレーターを用いて行っています。動物室内の実験室にはクリーンベンチ、CO2インキュベーター、マイクロマニュピレター、倒立顕微鏡、実体顕微鏡、簡易オートクレーブ、乾熱滅菌器、遠心分離器、冷蔵庫、電子天秤等があり、胚移植などの操作ができます。二階の実験室では分譲用細胞の増殖、遺伝子の増幅、品質管理を行うためにDNA抽出機、シーケンサー、ドラフト、クリーンベンチ、CO2インキュベーター等、多くの機器が設置されています。
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当施設のスタッフは一般施設に比べ少数の人員で運営されており、発足時にはマウスしか飼育していなかったのですが、今年6月からはラットも飼育できるようになりました。
■業務の内容
疾患モデル、トランスジェニック、ノックアウト、ミュータントなどのマウスやラット胚ならびに精子を収集保管し、品質を管理すると共に研究者に供給する事業と希少動物等の資源安全を図るための保管事業を行っています。現在、動物胚バンクに保管されている系統は国立感染症研究所から寄託された2細胞期胚(ELてんかんマウス、ICGN/Mネフローゼマウス、Yok/ICR、MPSマイコプラズマ易感染性マウス、PC貧毛マウス、BKOノックアウトマウス)、精子(BHノックアウトマウス、CG18-Tgマウス、Cal G48-Tgマウス、Cal F89-Tgマウス)の10系統、国立循環器病センター研究所から寄託された精子(GFP-Tgマウス:2ライン)1系統、ワイエスニューテクノロジー研究所から寄託された2細胞期胚(キノホルム感受性ラット、キノホルム抵抗性ラット、GFP-Tgラット)の3系統、計14系統です。この内、分譲可能な系統はGFP-Tgラット2細胞期胚647個(27サンプル)です。また、多くの研究者に資源を利用してもらうため、寄託された凍結2細胞期胚を融解、移植し、マウス3系統(ICGN/M ネフローゼマウス、MPS マイコプラズマ易感染性マウス、BOKノックアウトマウス)の生存仔を育成しております。今後、自然交配あるいは体外受精などの手法を用いて更に動物を増やし、分譲用凍結胚や精子を作製するとともに微生物検査、遺伝学的検査等の品質管理を行っていきます。
凍結操作に関する研究および改良については、(1)ラット胚のマウス同様な簡易急速凍結法の確立、(2)ラット胚の凍結・融解操作に使用する培地の均一化(キット化された製品)、(3)ラット精子の凍結保存の確立などを計画しています。
■終わりに
当胚バンクは比較的小規模ではありますが、企業、大学、各種研究機関の研究者の実験をサポートするため、他のバンク施設や各研究機関と協力し、ヒト疾患モデルとして利用可能な資源の収集、特にラットを中心に胚ならびに精子の収集・保存に微力ながら力を注いで行きたいと考えています。(財)ヒューマンサイエンス研究資源バンクの詳細な活動はホームページ(http://www.jhsf.or.jp/index_b.html)をご覧ください。
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