施設紹介「（株）ワイエスニューテクノロジー研究所」

はじめに

（株）ワイエスニューテクノロジー研究所は、生物系特定産業技術研究推�進機構の新技術開発促進事業における出資事業として、生物系特定産業技術研究推進機構、社団法人畜産技術協会、雪印乳業（株）、三共（株）からの出資を得て平成4年3月16日に設立された。第１ステージにあたる７年間の試験研究期間には、哺乳動物の優れたタンパク質生産能力を活用して乳汁中に物質生産を行なう�動物工場�で使用するトランスジェニック家畜を確実かつ効率的に作製する実用技術の開発を行なった。試験研究期間が満了した平成11年3月において、動物工場の事業化に着手することは時期尚早との判断がなされ、動物工場技術の開発で培った分子生物学技術ならびに発生生物学技術を疾患モデル動物などの有用実験動物の作製に特化した事業展開を目指すことになり、遺伝子操作関連技術サービスが平成11年4月から開始された。本事業を展開する中では、これまでの試験研究期間で培った技術を実用システムとすることに加え、遺伝子改変実験動物の開発に必要な遺伝子ターゲティング技術や体細胞クローン技術などの最新技術の実用開発にも積極的に取り組んでいる。そして、生命科学研究の基礎から実用に至る幅広い分野において活用される遺伝子改変動物に関連する各種技術の普及に取り組み、信頼される技術を迅速に提供することで日本の生命科学研究に貢献できる研究所を目指している。

研究所の所在及び組織の概要

　（株）ワイエスニューテクノロジー研究所は、JR宇都宮線の小山駅と宇都宮駅の中間にある石橋駅の南方2kmに位置する。栃木県下都賀郡石橋町第3工業団地内にある第一製薬（株）栃木研究センター内の施設を賃借し、男女ほぼ同数から構成される25名のスタッフが働く小さな研究所です。研究所は研究部と総務部で構成されている。研究部は技術開発を担当する分子生物学研究室と発生生物学研究室及び遺伝子操作関連技術サービスを担当する事業開発室に加え、研究所の業務を総括する企画室からなるが、限られた人数で構成される組織であるため、メンバーは相互に協力しあって業務を進めている。

研究活動の概要

　動物工場技術開発を目指した７年間の試験研究期間は、ラット、ブタ、ウシを対象に、そして、有用実験動物の作製に特化した平成11年4月からは、マウス、ラット、ウサギを対象に技術開発を行なっている。平成７年には、導入遺伝子の乳腺における発現を出生直後に雌雄を問わず判定する技術を世界に先駆けて開発した。平成８年には�ヒト成長ホルモンを生産するブタの作出に成功して国内初の動物工場技術を構築した。更に、疾患モデル動物などの有用実験動物の作出も力を注ぎ、トランスジェニックラットの作出では屈指の実績を持っている。特に、薬物動態の研究や薬物毒性のスクリーニングに有用な培養細胞株を容易に樹立きるSV40温度感受性変異株のラージT抗原遺伝子を導入したtsA58ラットや再生医学研究や臓器移植研究に有用な全身の細胞が蛍光物質を生産するEGFPラットを開発し、広く研究者に提供して高い評価を得ている。

　平成11年4月から開始した遺伝子操作関連技術サービスは、マウス、ラット、ウサギを対象にトランスジェニック動物の受託作製を行い、年間４万個の遺伝子注入胚の移植体制が整っている。それらトランスジェニック動物の作製実績は、約8割がマウスで残りがラットである。ウサギは数例に止まり、これからの展開が期待されている。DNAマイクロインジェクションに加え、注入遺伝子の設計や構築、作製したファウンダー動物の遺伝子解析や繁殖、樹立したトランスジェニック動物の受精卵の凍結保存までの上流から下流までの総合受託体制が整えられている。ノックアウトマウスの作製では、キメラマウスの作製に加え、遺伝子ターゲティングベクターの作製やES細胞のクローニング、生殖系列キメラマウスの繁殖までの上流から下流までの受託体制も整えられている。

　更に、ポストゲノム時代の表現形質の解析に視点を置いた取り組みにも力を入れている。ラットは古くから実験動物として利用され、様々な表現形質を示す疾患モデル動物が報告されている。同じゲッ歯類のトランスジェニック動物でもマウスとラットでは異なる表現形質を示すことが報告されるに加え、ラットのゲノムシークエンスの完成も近いことから遺伝子改変ラットの使用が活発化することを予想した取り組みがなされている。ラットの顕微受精技術や体細胞クローン技術などの最新技術の開発にも積極的に取り組み、信頼される受託技術の提供を目指してシステム開発に取り組んでいる。

遺伝子操作実験動物関連技術サービス

　マウス・ラット・ウサギのマイクロインジェクション、キメラマウスの作製、マウス・ラット受精卵の凍結保存、マウス・ラットの胚移植によるSPF化、遺伝子改変動物の維持繁殖、導入遺伝子の検定 (サザン法、PCR法)、導入遺伝子の構築などの遺伝子操作実験動物に関する幅広い技術サービスを行なっている。更に、部分的な技術サービス以外にも、哺乳動物の遺伝子操作法の開発に関わる研究受託も行なっている。例えば、遺伝子操作による疾患モデル動物などの有用実験動物の開発も行っている。遺伝子操作実験動物関連技術サービスの詳細はホームページ（http://www.t-cnet.or.jp/‾ysnt/）にあるが、項目にない技術も相談すれば可能な限り応じている。受託内容の相談や打合せは全て電子メール（E-mail: ysnt@t-cnet.or.jp）で受け付けている。

おわりに

　ご紹介するように、私の所属する（株）ワイエスニューテクノロジー研究所は、遺伝子改変動物に関わる研究開発と事業開発を行っており、遺伝子改変動物に関わる研究の総合支援を通じて生命科学の発展に貢献することを目指す研究所である。スタッフ一同が「遺伝子改変動物に関わる最高の技術を迅速且つ確実に提供する」を合言葉に日々取り組んでおり、何なりとご依頼ください。