書評

日本性科学体系IV
女性前立腺

Milan Zaviačič 著

林田 訳

2004年2月
B5版 150頁
3,150円(税込み)
発行所 (株) フリープレス
東京都文京区関口 1-24-6-104
電話 03-3266-1121  Fax 03-3266-1123

 

【JRD2004年8月号(vol.50, No.4)掲載】


 前立腺は、精液の液状成分を生産分泌する主要な副生殖腺で、成人男性では前立腺癌や前立腺肥大など、臨床面でも関心を集める器官である。

 原著者、ミラン ザビアチッチ博士は、東欧スロバキア共和国コメニウス大学医学部の病理学と法医学担任の教授で、研究面では専門の病理学、組織化学の手法を駆使して標記の課題に精力的に取組んできた。本書は、その集大成で、博士自身の17年間にわたる研究結果と、世界中から集めた膨大な関係情報の入念な分析によって、“女性にも男性の前立腺に類似の組織が存在する”との新しい概念を構築、紹介した。

 訳者、林田博士は、九州大学医学部卒業後、ニュ−ヨ−クのセント・ジョ−ンズ病院およびマウント・サイナイ病院で臨床経験を積んだ産婦人科医で、米国の著名な性科学者ベバーリー ウイップル博士に英語版の“The Human Female Prostate”を紹介された。原書を通読した林田博士は、従来の常識を一新させるユニ−クな学術情報が豊富に含まれていると直感し、日本語版の発行を目指して、これを実現させた。

 本書は、女性前立腺に関する、研究の歴史、解剖所見、微細構造と機能、指標となるマーカー等を詳述するとともに、臨床面では、専ら男性に起こるとされてきた前立腺の機能異常が、女性にも無縁でないと警告している。

 一般に家畜では、雄性副生殖腺としての前立腺は精嚢腺ほど目立たず、分泌物の役割も十分明らかにされているとはいえない。また、雌性前立腺についての報告もない。本書は、家畜の前立腺にも重要な検討課題が残されていることを示唆している。

(正木淳二)


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