施設紹介

独立行政法人 家畜改良センター

米内 美晴(技術部 生産技術専門役)

JRD2002年6月号(Vol. 48, No. 3)掲載




1 家畜改良センターの概要

 独立行政法人家畜改良センターは、近年発展の著しい畜産新技術を活用した効率的な家畜改良増殖を推進する体制の整備等を図るため、平成2年10月1日、旧農林水産省福島種畜牧場を本所として改組し、さらに全国で独立して機能していた農林水産省の各種畜牧場を内部組繊として位置づけて発足しました。その後、「中央省庁等改革に係る大綱」に基づく「特定独立行政法人」として、平成13年4月1日に農林水産省の機関から独立行政法人家畜改良センターとなり、現在に至っています。本所は、那須連峰を望む福島県白河市の西方約6km、東北新幹線新白河駅より約2km、東北自動車道白河インターチェンジの正面に位置しています。年間平均気温は11.6度、夏期の最高気温は35度前後、冬季の最低気温は-15度前後となることもあり、気温較差が大きく、年間平均雨量は1,500mm程度です。本センターには、このほか、本所芝原地区(本部地区西方約8kmの那須山麓)、全国11か所(新冠、十勝、奥羽、岩手、茨城、長野、岡崎、兵庫、鳥取、熊本、宮崎)の牧場があり、本所での企画・調整のもとに、特徴のある家畜改良及び飼料種苗業務を実施しています。


2 業務の概要

 本センターは、独立行政法人として、平成17年度末を達成期限とする「中期目標」(農林水産大臣が定める)を達成することが求められており、そのためのアクションプログラムである「中期計画」(家畜改良センター理事長が定める)に沿って業務を実施しています。主な業務内容は、(1)家畜の改良増殖、(2)飼料作物の増殖に必要な種苗の生産及び配布、(3)飼料作物の種苗の検査、(4)調査研究、(5)畜産技術に関する講習及び指導、(6)家畜改良増殖法及び種苗法に基づく検査等であり、これらの業務について本所及び各牧場において分担して実施しているほか、独立行政法人農業技術研究機構や、本所に隣接している(社)畜産技術協会附属動物遺伝研究所、(社)畜産環境整備機構畜産環境技術研究所とも連携し、効率的かつ機能的な業務の推進を図っています。最近のトピックス的な業務としては、BSE(牛海綿状脳症)の発生に伴い、本所構内に家畜個体識別制度管理センターが設置されるなど、緊急的な行政ニーズにも的確な対応を行っています。


3 繁殖関連新技術の開発実用化

 本センターの調査研究業務のうち、繁殖関連技術に関する新技術の開発実用化について、簡単にご紹介します。

(1)家畜の受精卵移植技術の改善
 牛については、本所、新冠・岩手・宮崎の各牧場が連携し、(1)乳用育成牛の連続過剰排卵処理技術について卵胞波及び性ホルモンの動態についての調査を実施するとともに、(2)ガラス化保存技術について培養液改善のための調査を行っています。また、(3)操作後の受精卵保存法について切断等の操作後の受精卵の保存技術に関する保存法の比較のための調査を行っています。豚については、本所、茨城・宮崎の各牧場が連携し、受精卵の低温保存技術について2種類の保存法の比較のための調査を行っています。

(2)クローン技術の改善
 本所と十勝牧場が連携し、クローン技術の改善に取り組んでいます。初期胚の切断二分離によるクローンについては、(1)胚分割技術に関して培養液改善のための調査を行うとともに、(2)栄養膜細胞の核移植技術法の開発のために栄養膜細胞をドナー細胞とした核移植に取り組み、また、(3)栄養膜小胞の共移植が操作胚の移植受胎率に及ぼす影響についての調査を行っています。体細胞クローンについては、体細胞クローン胚妊娠牛の血中物質を定期的に測定し、クローン胚の成長及び流産状況との関連の調査を行っています。クローン牛の発現形質及び特性については、クローン牛の正常性と相似性を確認するために生産形質及び生理機能についての調査を行っています。

(3)牛以外の家畜の人工授精技術等の改善
 牛以外の家畜についても、利用者ニーズを把握し、豚精液の凍結保存、山羊・めん羊・馬の凍結精液の保存性、めん羊・山羊の繁殖季節外発情誘起等の技術について、調査を行っています。豚については、本所と茨城牧場、山羊・めん羊については、本所と十勝・長野の各牧場が連携し実施しています。

(4)鶏の胚操作技術
 鶏についても抗病性、産卵性、産肉性等に優れた個体を効率的に作出するため、本所と、岡崎・兵庫の各牧場が連携し、鶏胚の体外培養法による生殖細胞キメラの実用化に取り組んでいます。


4 おわりに

 本センターでは、畜産農家と消費者ニーズに応えることを主眼として、新技術の開発・実用化に取り組んでいます。今後とも、おいしくて安全な畜産物の効率的な生産のため、本学会会員各位からのご指導をあおぎながら、調査研究を推進してまいります。


This site has been maintained by the JSAR Public Affairs Committee.
Copyright 1999-2002 by the Japanese Society of Animal Reproduction